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バイデン大統領を待ち受ける中間選挙へのいばらの道~転換期の米国内情勢

パンデミックの次は経済とウクライナ危機のジレンマ。トランプ氏の求心力に陰りも

佐藤由香里 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 研究員

拡大バイデン米大統領=2022年1月19日

支持率は中間選挙を控え最低レベルに

 2021年1月、「アメリカを結束する」との宣言とともに就任して1年余り。ジョー・バイデン大統領は、終息しないパンデミック、記録的なインフレ加速に伴う物価高騰、予算案合意の難航、遂にはロシアによるウクライナ侵攻など次々と立ち塞がる困難によって、かなり厳しい局面に立たされている。

 米ABCとワシントン・ポストによる最新の世論調査(2月20-24日実施)によれば、バイデン大統領の支持率は38%と歴代でもジェラルド・フォード大統領およびドナルド・トランプ大統領並みの低さを記録した。

 また、NPR/PBS/Maristによる全国世論調査(2月15-21日実施)では、国民の過半数からは「バイデン大統領は米国を(結束どころか)分断した」、「バイデン政権の1年目は失敗だった」、「次期大統領選には出馬してもらいたくない」などと、散々な評価が続いた(なお、3月1日の一般教書演説の後、支持率は42%程度に若干回復した)。

ウクライナ危機の中、政治の季節突入

 現政権の政策に対する「通信簿」とも言われる中間選挙(注)が11月に迫り、アメリカは政治の季節に突入した。中間選挙は、伝統的に注目度が低いと言われるが、次の大統領選挙を見通す上で欠かせないファイクターが多く潜んでいる。

 追い詰められたバイデン大統領は共和党に上下両院奪還(レッド・ウェーブ)を許すのか。更に記録的に跳ね上がるインフレ対策と、ウクライナ危機を巡るロシア制裁とのバランスを如何にしてとるのか。本稿では、これまでの国内情勢をベースに、民主党、共和党、トランプ前大統領の動向やウクライナ問題が2024年大統領選挙に及ぼし得る影響を分析したい。

(注)中間選挙は、4年ごとの大統領選挙の中間の年に実施される議会選挙。任期6年の上院は定数100議席の約3分の1、任期2年の下院は全435議席が、それぞれ改選の対象となる。全米で州知事や市長、州裁判官などの選挙も同時に実施される。上院の現有議席数は、民主党50、共和党50、上院議長を兼ねるカマラ・ハリス副大統領が加わることで民主党がかろうじて多数党となっている。下院の議席数は、民主党222、共和党211、空席2(3月2日時点)。予備選挙は各州で3月~9月、本選挙は11月に実施予定。

拡大ウクライナ南東部のマリウポリで、ロシア軍の空爆を受けた病院。ウクライナの警察当局が公開した=2022年3月9日

国内経済対策と対ロ制裁、バランス難しく前途多難

 米国の経済は2021年、実質GDPが前年比5.7%増となるなど、1984年以来最大の成長率を記録した。その一方で、今年2月の米消費者物価指数(CPI)は7.9%上昇(前年同月比)し、インフレに伴う凄まじい物価高は、国民の生活を圧迫している。経済成長とインフレ加速という異なるシグナルが混在する中、日用品等の価格高騰によって国民の不満は鬱積しており、バイデン大統領支持率に大きな影を落としている。

 ホワイトハウスが、昨年の約2.2兆ドル規模の経済刺激政策「American Rescue Plan」について、かかる経済・雇用成長促進に大きく寄与していると強調する一方で、エコノミストらの間では、事実上の「ばらまき」が今日の物価高の要因であると批判する声が絶えない。とりわけ2020年大統領選でバイデン氏勝利の鍵となった無党派層の支持率が、前述のNPR/PBS/Maristによる調査では、最高値だった昨年2月に比べて20%も落ち込んでおり、深刻な懸念材料と言えよう。

拡大ホワイトハウスでインフラ投資法に署名するバイデン大統領(中央)=2021年11月15日、ワシントン

国民の懸念は「パンデミック」から「経済」「ウクライナ問題」に

 新型コロナ・パンデミックは3年目に突入した。米国の感染者数は累計で7,900万人を超え、未だ1日あたりの死者数は約1,400人と高い水準にある一方、1月中旬のピークを境に、新規感染者数は9割以上減少している。

拡大激しい物価上昇を契機に賃金改善などを求めてストライキに入った工場の従業員ら=2021年11月、米ネブラスカ州
 Yougov/Yahooの世論調査(2月24-27日実施)では、国民の懸念事項について、「パンデミック」と答える割合はこの1か月で10%程度に激減し、代わりに下位だった「インフレ」が伸びて逆転、そしてロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに「ロシア・ウクライナ問題」が伸び、上位に並んだ(※「インフレ」、「ロシア・ウクライナ問題」がそれぞれ23%であった)。

 しかしバイデン大統領はここにきて国内のインフレを抑制したいという思いと、ロシアに対する経済制裁によって更なる物価高が起きるリスクとの間で、板挟みになっている。

 世論が求めるロシアに対する強い経済制裁、なかんずく、エネルギーの禁輸はガソリン価格の急上昇に繋がり、インフレを加速する訳で、双方のバランスをとることは難しく、前途多難だ。

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筆者

佐藤由香里

佐藤由香里(さとう・ゆかり) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 研究員

カルフォルニア州立大学で学士号(国際関係論)、ワシントン・セントルイス大学で理学修士号(公衆衛生学・MPH)取得。米国中西部の地域病院プロジェクトマネージャー、在米デンバー総領事館専門調査員(政治・経済・広報文化)など8年間の米国生活を経て2019年7月に帰国。同8月より現職。注力テーマは米国の内政・選挙、公衆衛生、社会問題。国際戦略研究所ウェブサイト『考』に分析レポートを掲載。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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