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ウクライナの「人道回廊」は要注意!~血迷っているプーチン政権

一般市民を避難させるための「退避ルート」。ロシアの提案にひそむ「非道」の気配

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

 ウクライナ侵攻をめぐり、ロシアのラブロフ外相とウクライナのクレバ外相が3月10日、仲介役のトルコのチャブシュオール外相を交え、トルコ南部のアンタルヤで会談した。ただ、この三外相会談は、停戦に向けた進展のまったくない、無意味な結果に終わった。

ロシア外相の「ウクライナを攻撃していない」に驚愕

 今回の3外相会談は、トルコのエルドアン大統領がロシアのプーチン大統領と電話協議をした際に合意したものとされるが、会談後におこなわれたラブロフ・ロシア外相の記者会見を観ると、仕掛けたのはロシアであるようにみえる。

 プーチン大統領の意を体して、ロシア国内に向けて、現実に激しさを増しているロシアによるウクライナ侵攻の“意義”を伝える必要があったのであろう。

拡大国連総会会合で演説するウクライナのクレバ外相=2022年2月23日、米ニューヨークの国連本部、国連ウェブTVから
拡大ロシアのラブロフ外相=2021年9月23日、米ニューヨーク、外務省提供

 それにしても、ラブロフ外相の「他国を攻撃するつもりはない。ウクライナも攻撃していない」という記者会見での発言には驚いた。これをロシア国民に向けて言うために、トルコにまで足を運んでニュースにしたのではないかとさえ感じる。だとすると、プーチン政権もいよいよ袋小路に入ったと思わざるを得ない。

 ウクライナのクレバ外相にすれば、こうした展開は織り込み済みだったのだろう。会談前にSNSを通じてロシア側に三つの明確な要求をしていたという。それは、①停戦、②占領された地域の解放、③人道問題の解決、である。

 しかし、これらの要求はロシア国内で報道されることはなかったし、会談後の会見でも「ロシア側は停戦を成立させる気がない。ロシアの要望はウクライナの降伏」と述べ、冷ややかな空気を漂わせた。

 冷戦の終結から30年。共産主義から自由と民主主義の国になったはずのロシア共和国は、どこでどうなってしまったのか。あの“圧政者”のスターリンでも、ここまでぬけぬけと「ロシアはウクライナを攻撃していない」とは、さすがに言わないであろう。

※ロシアのウクライナへの軍事侵攻に関する「論座」の記事は特集「ウクライナ侵攻」からお読みいただけます。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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