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プーチン大統領の最大の誤算は元芸人ゼレンスキー大統領とウクライナ国民の抵抗力

メディアを巧みに使う元コメディアンの「才人」に元KGBの権力者はどう出るのか

山口 昌子 在仏ジャーナリスト

 ウクライナ戦争は開始からすでに3週間近く経ったが、ロシア軍の猛撃が続く中、ウクライナの首都キエフは陥落せず、ゼレンスキー大統領を先頭にウクライナ国民の果敢な抵抗が続いている。プーチン大統領の最大の誤算は元お笑い芸人のゼレンスキーの知力と政治力と胆力、21世紀の強力な武器であるメディア映像を使った政治手法を侮っていたからではないか。

拡大キエフで3月15日にポーランド、チェコ、スロベニアの首脳らと会談するウクライナのゼレンスキー大統領=ポーランドのモラビエツキ首相のツイッターから

ゼレンスキーとの初対面で余裕綽々だったプーチン

 プーチンとゼレンスキーの最初の顔合わせは2019年12月9日、パリのエリゼ宮(仏大統領府)だった。「モデル・ノルマンディ」と呼ばれるドンバス戦争(2014年から続行中のウクライナ東部ドネツク州、ルガンスク州でのウクライナ軍と親ロシア派武装勢力=ロシア=との紛争)の解決を目指す会談の席上だ。

 ドンバス戦争は工業地帯の拠点であるこの地方を舞台にした紛争で、当時、すでに開始から5年が経過していた。2019年の時点で死者1万3000人、約100万の避難民が国内外に移動中だった。

 紛争当事者のロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領に加え、仲介役の仏独首脳(マクロンとメルケル)の4者で行われた会談では、その年の4月の大統領選で圧勝し、5月に大統領に就任したばかりのゼレンスキーに対し、プーチンは余裕綽々(しゃくしゃく)だった。

 フランスのテレビニュースで盛んに流された映像では、丸テーブルを挟んでプーチンとゼレンスキーが向かい合って座り、プーチンの隣にマクロン、ゼレンスキーの隣がメルケルという配置だった。会議冒頭の記念撮影の際、ゼレンスキーがカメラに背を向ける恰好だったため、プーチンが「カメラの方を向いたら」と国際舞台初登場で緊張気味のゼレンスキーに対し、苦笑気味に鼻先であしらうように注意していたのが印象的だった。

読み間違えた大統領と国民の抵抗力

拡大パリのエリゼ宮(大統領府)で共同記者会見に臨む(左から)ウクライナのゼレンスキー大統領、ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン首相、ロシアのプーチン大統領=2019年12月9日、AP

 ゼレンスキ―はこの時、弱冠41歳。ウクライナ史上最小年の大統領だった。隣のメルケルがまるで母親のように若い大統領に小声で絶えず、何か囁(ささや)いていた。何枚か配布された通信社の写真の中には、伏し目がちのゼレンスキーが爪を噛んでいるシーンもある(あるいはゼレンスキーの演出か?)。

 それから2年余、数日で陥落するはずのキエフが3週間も抵抗し、2月中には片付くはずの全ウクライナ制覇が3月に入っても達成できないなか、プーチンはゼレンスキーに対してどんな思いを抱いているのだろうか。

 ひとつ言えるのは、2月24日のウクライナ侵攻の時点で、ゼレンスキー大統領とウクライナ国民の抵抗力を、完全に読み間違えていたということだ。

※ロシアのウクライナへの軍事侵攻に関する「論座」の記事は特集「ウクライナ侵攻」からお読みいただけます。

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筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト

元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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