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ウクライナの人道危機で私たちにできること~260万人が他国に。国内の状況も深刻

世界に広がる連帯の動き。一人の力は小さいかもしれないが積み上げれば大きな力に

柴田裕子 特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)緊急対応部部長

 2022年2月24日、ロシア軍によるウクライナへの侵攻以来、ウクライナをめぐる情勢は刻一刻と変わり、先が見通せない状況が続いている。ロシアの攻撃はやまず、ウクライナの人々は家を離れ、安全を求めて周辺国へ逃れ、日々その数が増えている。小児科や産婦人科の病院が攻撃され、子どもを含む多くの死傷者が出ているなど、心が痛む状況が続いている。

拡大ポーランドへの列車を待つために鉄道駅の集まってきた難民=ウクライナ・リビブ、2022年3月6日 Bumble Dee/shutterstock.com

緊急人道支援として17億ドルが必要

 国連は1日、「緊急アピール」を発出し、ウクライナ国内で避難していたり、国外に逃れたりする人々に対する緊急人道支援として17億ドル(約1950億円)が必要だと発表した。

 グテーレス国連事務総長は、国連機関やNGOなどのパートナー団体は、支援を拡大していると述べ、特に女性、子ども、高齢者や障がいのある方々などへの支援の重要性を強調。ウクライナ国内で支援を必要とする人々は約1200万人に上るうえ、400万人以上が難民となって国外に逃れ、保護や支援を必要とする可能性があると推計した。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表によれば、2月24日からの2週間で約200万人、3月12日現在で260万人を超える人がウクライナの国境を越え、隣国に逃れているが、より深刻なのは、ウクライナ国内の状況だとされる。ウクライナ国内で避難している人々の数は把握されていないが、日々、ニュースやSNSを通じて伝わってくる人々の状況からも、その状況の悲惨さや支援ニーズの大きさが想像される。

子どもだけで避難するケースも

 260万人の難民のうち、半数以上の160万人の人々を受け入れているポーランドでは、すでに国際NGOや地元住民グループなどが、国境で人々の受け入れなどの支援をおこなっており、13カ所の難民受付センターが設置されている。知人を頼って一時的にポーランドに滞在するほか、さらに他の国へ移動するケースある。

 モルドバでは、政府によってウクライナからの人々を受け入れる難民センターが設置されたが、72時間という滞在制限があり、多くの人がポーランドなど他国への移動を強いられている。モルドバから陸路でルーマニアに向かう車両も提供されているが、一日に600人しか運べず、やむなく滞留する人々も少なくない。

拡大モルドバ共和国との国境を越える順番を待っているウクライナからの子供たち=2022年2月25日、オデッサ地方パランカ・ウクライナ。
拡大難民一時受け入れセンターで待つ8歳の少女=2022年3月/2日(C)Anthony Upton/DEC

 ウクライナでは、18歳から60歳までの男性の出国を制限しているため、国外に逃れるのは女性、子ども、高齢者の人々だ。子どもだけで避難するケースも確認されており、その保護も喫緊の課題となっている。


筆者

柴田裕子

柴田裕子(しばた・ゆうこ) 特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)緊急対応部部長

企業での勤務経験を経て、2003年にピースウィンズ・ジャパン(PWJ)に入る。アフガニスタン事務所において、水・衛生、女性のエンパワメント、農業、収入向上など様々な事業を担当。その後、イラク、シエラレオネ、リベリア、南スーダン、スリランカ、東ティモールなどにおける人道・開発支援、パキスタン、ハイチ、東日本大震災など、国内外の災害支援に従事する。2012年3月にジャパン・プラットフォーム(JPF)に入り、海外事業部長として海外での人道支援への助成事業を統括し、外務省、アカデミアなどの各アクターとの連携調整、海外の支援団体との連携や、助成ガイドライン策定に関わる。2017年4月より現職。国内外の緊急支援を統括する。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです