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ウクライナ侵略は、日本にとり「対岸の火事」では済まされない

戦争終結には米ロ首脳の直接交渉が必要。和平と紛争予防も包含した努力を

登 誠一郎 社団法人 安保政策研究会理事、元内閣外政審議室長

拡大ウクライナ南東部マリウポリ市で3月14日にドローンで撮影された住宅地。ソーシャルメディアの画像から。AFP通信が伝えた市当局の情報では、ロシア軍に包囲され、水や電気、食料の供給が途絶えたまま約40万人が地下室などに避難している

国際社会は、ウクライナに最大限の支援を

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から3週間が経過しようとしている。ロシア軍の攻撃が首都キエフを目指す多方向からの全面的侵攻として電撃的に行われ、また両軍の規模の圧倒的な差異から、内外の多くの専門家は、ウクライナが長く持ちこたえることは困難と予測した。さらにロシアによる侵攻の当初から、米国とNATOがウクライナに軍隊を派遣することはないと明言したことも、このような予測に拍車をかけた。

拡大ウクライナから国外に避難するため、ポーランド国境に向かう人たち=2022年2月26日、ウクライナ西部・シェヒニ近郊
 この状況の下でウクライナが必死の抵抗を示してキエフをはじめとする主要都市を防御していることは、実に立派としか言いようがない。この中で、今後、西側諸国を中心とするロシアに対する経済制裁が一層の効果を表わすこととなれば、停戦交渉の進展に一縷の希望を持たせることとなる。

 この希望が現実のものとなるため、国際社会は一致してウクライナに対して、軍事物資の援助から避難民受け入れに至るまで、物心両面から最大限の支援を行わなければならない。

拡大米連邦議会で、オンラインで演説するウクライナのゼレンスキー大統領=2022年3月16日

終結の仕方は世界の今後に多大な影響、日本と東アジアにも

 まず第一に必要なことは、ウクライナ人の生命と財産にこれ以上の被害を与えてはならないという人道的考慮であり、さらに国際社会が、現下のウクライナ危機から、今後の世界の平和と安全の維持・増進についての教訓を得るためにも、ウクライナの一方的な敗北ではない形で、一刻も早くこの戦争を終結させることである。

 万が一、この戦争を仕掛けた侵略国が明白な勝利を得るようなことがあれば、今後の世界の平和と安全は多大な危険と不安を抱えることとなる。我が国を取り巻く東アジアの状況についても全く同様である。

 日本は今回の危機を、決して「対岸の火事視」してはならないのである。

拡大ウクライナのゼレンスキー大統領と電話で協議した後、記者の質問に厳しい表情を見せる岸田文雄首相=2022年2月28日、首相官邸

真に必要なのは「戦争終結」「和平達成」「紛争の予防」

 トルコの仲介により3月10日に開催されたウクライナとロシアの外相協議は全く進展がなく、ロシア側による事実を無視したPRの場に終始した感があるが、ロシアが現状では停戦の意思がないことを考えれば、外相レベルの協議に期待することは無理である。

拡大ブリュッセルのNATO本部に掲げられたNATO旗と欧州旗。後方は加盟国旗(Alexandros Michailidis/Shutterstock.com)
 またこれまでベラルーシ国内で3回、さらには14日から継続的に行われたオンラインの停戦協議は、あくまでも「停戦」のための協議であり、いわば軍事技術的な交渉であるが、本当に必要なことは「戦争」の終結であり、さらに言えば、和平の達成及びより大きな「紛争」の予防である。

 プーチン大統領の言によれば、「NATOの東方拡大がロシアの安全保障にとっての脅威である」とのことである。それは彼の思い違いもあるが、それを大きな理由として今回ウクライナに侵攻したのであれば、その点に答えを出さねばならない。

 

今や、ロシアと米国の直接交渉が必須

 プーチンの立場からは、ウクライナ侵攻は手段であり、本来の目的は、ロシア崩壊以来、圧倒的に不利となってきたNATOとの力関係を回復することであろう。NATOとしてもこの問題に対応し、ロシアとの信頼関係を醸成しなければ、ウクライナ戦争は終わらない。NATO対ロシアというこの大問題について、実質的にNATOを代表してロシアと話し合うことができるのは、米国をおいてほかにない。

 具体的に述べると、現下のウクライナ危機の解決のためには、ウクライナとロシアとの「停戦協議」と並行して、NATOとロシアとの間で紛争予防のための「信頼醸成」の構築が必要である。その実現のためには、今や米国とロシアとの直接協議が必須であると確信する。

拡大2021年6月のジュネーブでの首脳会談で握手を交わす米国のバイデン大統領とロシアのプーチン大統領=2021年6月16日

※ロシアのウクライナへの軍事侵攻に関する「論座」の記事は特集「ウクライナ侵攻」からお読みいただけます。

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筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 社団法人 安保政策研究会理事、元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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