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「政治資金」を隠れ蓑にした選挙買収抑止のために、選挙前の「寄附」を禁止する法改正を

国会議員から地方議員へのばら撒きの流れを断ち、政治不信の解消へ

郷原信郎 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士

次々と表面化する「選挙とカネ」、公安委員長の足元でも

 広島での河井事件は、その後、新潟、京都での「選挙とカネ」の問題の相次ぐ表面化につながっている。

 新潟では、2021年11月に、泉田裕彦衆院議員が、星野伊佐夫県議会議員から、「衆議院選挙で当選するためには選挙区内の有力者に対して金を撒くしかない」と言って裏金を要求されたことを公表し、星野氏を公選法違反で刑事告発している。この問題への泉田議員の厳正な対応に、広島での河井事件の影響があったことは、公表された星野氏とのやり取りからも明らかだ。

 そして、2022年2月には月刊誌『文藝春秋』で、京都における国政選挙の際に、自民党候補者が選挙区内の府議・市議に50万円を配っていた「自民党京都府連の選挙買収問題」が報じられた。

 「衆議院選挙、参議院選挙とも候補者からの資金を原資として活動費(交付金)を交付している。これは府連から交付することによる資金洗浄(マネーロンダリング)をすること」

 とする内部文書に基づいて、国政選挙の候補者から、府連を通して、地方議員に多額の金が渡る「選挙買収の構図」を報じたものだった。

参院予算委で、自身の公職選挙法違反の疑いについて答弁する二之湯智国家公安委員長=2022年3月2日、上田幸一撮影 拡大参院予算委で、自身の公職選挙法違反の疑いについて答弁する二之湯智国家公安委員長=2022年3月2日

 2月10日、衆議院予算委員会で、参院京都府選出参議院議員で前府連会長の二之湯智・国家公安委員長が、立憲民主党の城井崇、階猛議員からこの問題について質問され、地元議員に金を配っていたことを認めた上、「選挙活動の目的ではなく、党勢拡大のためで、適正に処理している」と買収疑惑を否定した。

 同日、松野官房長官は、この問題について、二之湯国家公安委員長から報告を受けたとした上、

 「法令に則して、適正に処理をしているということでございます。私の方としては、その説明を了といたしております」

 と述べて、法的な問題はないとの認識を示した。

 しかし、3月9日の「文春オンライン」の記事では、二之湯氏が府連会長だった2012年12月19日付けの《来夏に施行される参議院議員通常選挙における府議会議員・京都市議会議員に対する活動費の支給について》と題する文書で、〈標記の活動費について、西田昌司議員事務所から既に府連に振り込まれておりますので、これを原資として、上記会議終了後に支給(交付)することとしてよろしいか。〉と記載され、実際に、29人の京都府議・市議に1人 30万円合計1,470万円がばら撒かれていることが明らかにされている。

 様々な公職選挙で、買収も含めた公選法違反の摘発を行っている全国の警察組織のトップの国家公安委員長が自身の選挙買収疑惑を抱えている状況で、警察の選挙違反摘発に対する信頼を維持することができるのだろうか。

 この京都府連の問題に関して、自民党茂木敏充幹事長は、2月15日の定例会見で、

 「自分なりに調べてみたが、立憲民主党の県連などでも同様のケースは散見される。収支報告書を見ればわかることで、同じようなケースが出てくる」

 と述べた。茂木氏が指摘しているように、野党議員の側でも、同様の行為が一部にあるとすると、問題は国会全体に及ぶものということになる。

 検察が、河井事件で、「国政選挙における政治家間の金銭のやり取り」を摘発したことで、 国政選挙の度に、全国で、「政治資金」を隠れ蓑にして、多額の金銭が地方政治家にばら撒かれている実態が、次々と明らかになり、国民の公職選挙に対する信頼が著しく損なわれている。それによって、近年高まっている政治不信が一層助長されることになりかねない。

 「買収まがいの政治資金のやり取り」を抑止するためには、どのような法律の運用ないし改正が考えられるのか、効果的な方策について考えてみたい。

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筆者

郷原信郎

郷原信郎(ごうはら・のぶお) 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士

1955年、島根県生まれ。東京大学理学部卒。東京地検特捜部、長崎地検次席検事、法務省法務総合研究所総括研究官などを経て、2006年に弁護士登録。08年、郷原総合コンプライアンス法律事務所開設。これまで、名城大学教授、関西大学客員教授、総務省顧問、日本郵政ガバナンス検証委員会委員長、総務省年金業務監視委員会委員長などを歴任。著書に『告発の正義』『検察の正義』(ちくま新書)、『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書)、『思考停止社会─「遵守」に蝕まれる日本』(講談社現代新書)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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