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プーチンはウクライナだけで満足するか?〜チェコからの報告(上)

第三次世界大戦前夜としてのウクライナ危機

細田尚志 チェコ・カレル大学社会学部講師(安全保障論)

一般市民に対する蛮行を止めようとしないロシア

 ロシア軍によるウクライナ国民に対する無差別殺戮や原子力発電所に対する攻撃は、非人道的であり即時に停止されるべきで、懸念される化学兵器の使用も絶対に回避されるべきですが、プーチンは、ウクライナ側が飲めない条件を繰り出して、攻撃の継続を目指しています。24日の侵略開始当初、一般市民や居住地域に対する攻撃を回避していたロシア軍は、ウクライナ側の果敢な防衛や、近年のロシア陸軍の諸兵科連合戦術単位である大隊戦術群(BTG)という800名程度の比較的小規模な部隊編成が通信能力や兵站能力不足を露呈させた点、その結果としての士気の低下や大量の投降、航空支援を伴わないちぐはぐな攻撃など様々な理由から侵攻速度が低下しています。そして、その遅れを解消するために、居住地域や人道回廊、そして、産婦人科・小児病院や学校に対する攻撃など、(戦争自体が非人道的ですが)特に非人道的な戦術が目立ってきました。この蛮行には、言うことを聞かないウクライナ人に対する「懲罰」的な上から目線の意識が含められています。そもそも、ウクライナを占領してロシアが管理する場合、最低でも50万人の兵力が必要と指摘される中で、プーチンは、その準備すらしていなかったと考えられます。

Bumble Dee:shutterstock.com拡大Bumble Dee:shutterstock.com

 ウクライナ側の善戦によって、「非武装化」および「非ナチス化」と言う抽象的な目標を現時点で達成できる気配はなく、プーチンの面子を保った形での停戦も難しいことから、事前に集結させた19万人の戦力を全てウクライナに投入したロシアは、戦力の追加投入によってじわじわとウクライナ全土を掌握するまで戦いを継続する意向で、早期の収束は期待できません。今後は、ロシアの国力が許す限り、一般犠牲者も厭わない都市の徹底的な破壊と、ウクライナ人や国際義勇兵によるパルチザン方式の抵抗という長期戦、つまり、ウクライナのアフガン化が懸念されます。その際に、自国兵士の命すら軽視して、体制に楯突く国民を弾圧し情報統制する「ファシスト」指導者が、他国民の被害に心を痛めて配慮することは期待できないでしょう。

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筆者

細田尚志

細田尚志(ほそだ・たかし) チェコ・カレル大学社会学部講師(安全保障論)

1972年生まれ。博士(国際関係学)。日本大学大学院国際関係研究科国際関係研究専攻博士後期課程修了。日本国際問題研究所研究助手、在チェコ共和国日本国大使館専門調査員を経て現職。著作に「Considering New Geopolitical Analysis on Japan-China Equivocal Relations」『Geopolitics in the Twenty-First Century』(Nova Science Publisher, 2021)など。 ※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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