足踏みの自由討議から脱却し、小委員会で各論の深化を
2022年03月29日
3月23日、参議院憲法審査会で、翌24日には衆議院憲法審査会で、それぞれ自由討議*1が行われた。審査会の定例日は、第179回国会(臨時会、2011年10月20日召集)において実質的に始動して以降、参院が「水曜日」、衆院が「木曜日」とされており、国会の会期中であれば二日連続開催は決して珍しくないはずだが、具体的な議論が行われる回としては実に5年4か月ぶりのことであった。
第192回国会(臨時会、2016年9月26日召集)において、参院憲法審で「憲法に対する考え方」について(同年11月16日)、衆院憲法審で「憲法の制定経緯と公布70年の振り返り」について(同17日)、自由討議がそれぞれ行われて以来のこととなる。もはや「定例日不開催」が慣例化している実態は、誰しも否定できないであろう。開催自体がニュース性を帯びるばかりか、その都度、委員の間から歓迎する声が上がり、与野党筆頭幹事に対して次週開催の要望が念押しされるのも、他の委員会では見られない皮肉(異様)な光景である。
3月24日の衆院憲法審は「緊急事態条項を中心とした集中討議」として開催され、緊急事態下における①両院議員の任期の延長、②内閣による緊急政令の必要性、許容性に関する議論が行われた。次週(31日)以降、会期末(6月15日)までの安定開催はなお、予断を許さない状況であるものの、確固たる運営理念に則り、同一テーマで議論を継続できるかどうかは、大きな試金石となる。
この点、内容上の賛否を留保しつつも、審査会本体による「足踏み自由討議」で終わることがないよう、運営上の工夫を求めたい。議論の受け皿として、「緊急事態条項」「国民投票法改正問題」といったテーマごとの小委員会を設け*2、本体同様に週一回の定例日において具体的「各論」を深化させるべきことを、筆者は改めて主張したい。
かつて衆参両院に置かれていた憲法調査会は、5年間にわたる調査を踏まえて「報告書」を作成し、公表しているが(2005年4月)、憲法調査会の後継組織として誕生し、実質始動から10年を超える憲法審査会が、調査会の二倍を超える活動期間を経ながらも、定例日開催さえ覚束ず、たとえ開催されたとしても単発的な自由討議で終わるのが通例というのは、あまりに非生産的に過ぎる。開催する実益に乏しく(その内容は記録には残るが、記憶には残らない)、審査会自体(ひいては議院)の権威を棄損するものと言わざるを得ない。
また、憲法改正の具体的内容に関する事項と、その手続きを定める国民投票法の改正問題が同一の場で議論されること自体、同法に徹底して求められる公正さ(賛否中立)の理念を動揺させる点も看過できない。これを機に将来にわたって、別個の小委員会として議論の受け皿を明確に分離すべきである。
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2021年6月18日に公布され、3か月後の9月18日に施行された改正国民投票法(第2次)は、施行後3年(すなわち2024年9月18日)を目途に、国が「国民投票運動等のための広告放送及びインターネット等を利用する方法による有料広告の制限」について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずべき旨を定める(附則第4条第2号イ)。仮に、衆院憲法審に「国民投票法改正問題に関する小委員会」が設けられたとしたら、筆者は何より、後半の「デジタル国民投票運動広告規制」のあり方について議論を始めるべきことを訴える。
第一の理由は、法規制と自主規制を合わせた「共同規制」を前提とした検討(調査と合意形成)に相当な時間を要すると予想されるにも関わらず、具体的な議論に着手できていない現状に強い危機感を覚えるからである。
広告放送(CM)の規制は、放送法の関連規定とともに、国民投票法第105条「何人も、国民投票の期日前14日に当たる日から国民投票の期日までの間においては、次条*3の規定による場合を除くほか、放送事業者の放送設備を使用して、国民投票運動のための広告放送をし、又はさせることができない。」の規定の解釈を踏まえつつ(対象は放送事業者に限られる)、日本民間放送連盟が2019年3月20日に公表した「国民投票運動CMなどの取り扱いに関する考査ガイドライン」の意義と当てはめについて精査すれば足りるが(議論の方向性はおよそ限定的である)、デジタル国民投票運動広告の場合は、後に述べるように、いわゆるデジタルプラットフォーム(DPF)を中心に、規制の対象となる事業者を枠付けることから始めなければならない。
第二の理由は、
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