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ウクライナ侵攻に多くの誤算 プーチン・習近平の中ロ首脳会談が導火線に点火か?!

これからどういう行動をとるかが21世紀における各国の将来を想像以上に制約する

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

 ウクライナからの難民が、2月24日のロシアによる軍事侵攻から1カ月強でついに400万人を超えたという。この数字を見るだけでも、今回のロシアによる侵攻がいかに非道なものか、歴史に深く刻まれることになるだろう。

 その半数を超える難民を、隣国のポーランドが黙々と、当然のことのように受け入れている。そして、それが日本も含む世界的なウクライナ支援の広がりにつながっている。

拡大個人ID番号の発行を求めて並ぶウクライナからの難民=2022年3月26日、ポーランド南部クラクフ

単なる国連憲章・国際法違反ではない凶悪な事態

 ここで確認しておきたいのは、ロシアが突然、一方的に、容赦なくウクライナに侵入し、破壊と殺戮(さつりく)の限りを尽くしているのに対し、ウクライナはロシアに一歩も踏み込んでいないし、ロシアの街を破壊していないということだ。もちろん、子どもや女性など民間人を殺戮もしていない。

 ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャなどでは、多数の民間人に対する目を背けたくなるような残虐行為も明らかになった。メディアで報道されるこうした様々な状況を知るにつけ、ロシアの軍事侵攻が、単なる国連憲章、国際法違反にとどまらず、人類の存在、尊厳にかかわる凶悪なものであることがわかる。ブチャの惨事によって、インドもようやくロシアを非難する側にまわった。

 一方的な軍事侵攻で思い浮かぶ戦争に、1990年のイラクによるクウェート侵攻があるが、その邪悪さにおいて、ウクライナ侵攻ははるかにその上をいっている。

注目される大国・中国の動向

 周知のように、クウェート侵攻の際には、国際社会が一丸となって湾岸戦争を戦い、イラクを追い詰めた。1989年に東西冷戦が終わり、国連が一体となって不正な行為に対処できるという環境が生まれていたことが背景にあった。

 クウェート侵攻とウクライナ侵攻との決定的な違いは、国際社会の足並みにある。先述したように、今回起きている事態はクウェートのそれとは比べものにならないほど凶悪だが、これを非難しない国が少なからずある。

 とりわけ注目されるのは中国だ。3月2日におこなわれた国連総会でのロシア非難決議(193カ国中141カ国が賛成)に、中国は棄権している。そして、侵攻1カ月後の3月23日の国連安全保障理事会にロシアが提出した「人道決議案」には、ロシアとともに中国だけが賛成をした(他の13カ国は棄権)。

拡大ロシアを非難する決議案が圧倒的多数によって採択され、拍手するウクライナのキスリツァ国連大使(右端)=2022年3月2日、米ニューヨークの国連本部、国連ウェブTV

 中国は一体、何をしたいのか。ウクライナ侵攻前、米国との対立が顕在化、「新冷戦」がささやかれるほどに“大国化”しつつあるだけに、その動向には注視が不可欠だ。動き次第では、国際社会での絶望的な孤立化が避けられない可能性もある。

※ロシアのウクライナへの軍事侵攻に関する「論座」の記事を特集「ウクライナ侵攻」にまとめました。ぜひ、お読みください。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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