これからどういう行動をとるかが21世紀における各国の将来を想像以上に制約する
2022年04月07日
ウクライナからの難民が、2月24日のロシアによる軍事侵攻から1カ月強でついに400万人を超えたという。この数字を見るだけでも、今回のロシアによる侵攻がいかに非道なものか、歴史に深く刻まれることになるだろう。
その半数を超える難民を、隣国のポーランドが黙々と、当然のことのように受け入れている。そして、それが日本も含む世界的なウクライナ支援の広がりにつながっている。
ここで確認しておきたいのは、ロシアが突然、一方的に、容赦なくウクライナに侵入し、破壊と殺戮(さつりく)の限りを尽くしているのに対し、ウクライナはロシアに一歩も踏み込んでいないし、ロシアの街を破壊していないということだ。もちろん、子どもや女性など民間人を殺戮もしていない。
ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャなどでは、多数の民間人に対する目を背けたくなるような残虐行為も明らかになった。メディアで報道されるこうした様々な状況を知るにつけ、ロシアの軍事侵攻が、単なる国連憲章、国際法違反にとどまらず、人類の存在、尊厳にかかわる凶悪なものであることがわかる。ブチャの惨事によって、インドもようやくロシアを非難する側にまわった。
一方的な軍事侵攻で思い浮かぶ戦争に、1990年のイラクによるクウェート侵攻があるが、その邪悪さにおいて、ウクライナ侵攻ははるかにその上をいっている。
周知のように、クウェート侵攻の際には、国際社会が一丸となって湾岸戦争を戦い、イラクを追い詰めた。1989年に東西冷戦が終わり、国連が一体となって不正な行為に対処できるという環境が生まれていたことが背景にあった。
クウェート侵攻とウクライナ侵攻との決定的な違いは、国際社会の足並みにある。先述したように、今回起きている事態はクウェートのそれとは比べものにならないほど凶悪だが、これを非難しない国が少なからずある。
とりわけ注目されるのは中国だ。3月2日におこなわれた国連総会でのロシア非難決議(193カ国中141カ国が賛成)に、中国は棄権している。そして、侵攻1カ月後の3月23日の国連安全保障理事会にロシアが提出した「人道決議案」には、ロシアとともに中国だけが賛成をした(他の13カ国は棄権)。
中国は一体、何をしたいのか。ウクライナ侵攻前、米国との対立が顕在化、「新冷戦」がささやかれるほどに“大国化”しつつあるだけに、その動向には注視が不可欠だ。動き次第では、国際社会での絶望的な孤立化が避けられない可能性もある。
※ロシアのウクライナへの軍事侵攻に関する「論座」の記事を特集「ウクライナ侵攻」にまとめました。ぜひ、お読みください。
さて、ロシアのプーチン大統領が、ウクライナへの侵攻を最終的に決断したのはいつだろうか。その決断に習近平中国国家主席は関与していないのか。多くの人がその一点に注目している。
事態の経緯から、2月4日の北京冬季オリンピックの開会式前におこなわれたプーチン、習近平両氏の中ロ首脳会談が契機になっていると受け取るのが常識的であろう。
今回の北京オリンピックには、ウイグルでの人権問題などで多くの国が「外交ボイコット」をしたため、開会式を欠席した外国首脳が多かったなか、ロシア大統領が開会式に出席したことは、習主席にとって文字どおり“救いの神”であったに違いない。
だが、プーチン大統領からすれば、訪中した最大の目的は、開会式への出席ではなく、ウクライナ問題における習近平主席の意向を確認することにあったのではないか。
首脳会談後の共同声明についてのメディアの報道(2月5日朝日新聞)を読み、私が強く反応した声明の核心部分は次の点である。
▼中ロはNATO(北大西洋条約機構)のさらなる拡大に反対し、冷戦時代のイデオロギー的アプローチを放棄するよう求める。
▼中ロの利益や主権を守る確固たる支援を確認。
▼ロシアは「いかなる形でも台湾の独立に反対する」。
念のため、声明全文の邦訳を取り寄せて精読してみた。すこぶる長文で、問題や課題が“ちゃんこ鍋”のように放り込まれているが、主旨は絞られてくる。すなわち、
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