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戦争犯罪人と呼ばれるプーチン大統領を支えているものは?~ウクライナ侵攻

ロシア正教のキリル総主教との関係を背景にブレない姿勢。ロシア包囲網も不完全

酒井吉廣 中部大学経営情報学部教授

ローマ教皇とロシア正教総主教が2016年2月に会談

拡大ロシア軍の攻撃を受けた高層マンション=2022年4月6日、ウクライナ・キーウ
 ロシアが2014年のクリミア半島奪取の時から、今回の侵攻を想定していたと見るのは、今や世界で一般的となっている。この8年間に最大8万人が死んだとも言われるウクライナ東部・南部でのウクライナ人とロシア人の争いについては、少なくとも現在では、「ロシアが悪い」という評価に異を唱える人は少ない。

 しかし、プーチン支持者の理解は異なる。それによると、発端は2016年2月だ。

 同月、ローマ教皇はメキシコ訪問の途中でキューバの首都ハバナに立ち寄り、そこでロシア正教のキリル総主教と2時間にわたる会談を行った。当時の記録によると、キリル総主教がローマ教皇に面会を懇願したらしい。

 この頃のキューバは、オバマ大統領の下で対米国交回復を果たし、ある意味、平和のシンボルのような場所だった。そこまでキリル総主教が面談のためだけにやってきたのである。

 実はこの時の共同宣言の中に、今回のプーチンの演説に繋がっていると思われる二つのことが含まれている。

 一つは、「ギリシャ・カトリック教とギリシャ正教の間に緊張が存在するところでは、ローマ教皇とキリル総主教の会談が双方の和解と共存の形を必要としている」である。これは、ウクライナにおけるカトリック教徒(ウクライナ人)とギリシャ正教徒(ロシア正教徒のロシア人)との関係を示唆している。

 もう一つは、「私達(ローマ教皇とキリル総主教)は、すでに多くの犠牲者を出しており、平和な住民に無数の傷を与え、社会を深い経済的・人道的危機に陥れているウクライナの敵対関係を嘆く。私達は、この紛争に関与しているすべての部分に、慎重さ、社会的連帯、そして平和の構築を目指した行動を呼びかける。私達は、ウクライナの教会に対し、社会の調和を目指し、対立に参加することを控え、紛争のさらなる発展を支援しないよう呼び掛ける」である。どちらが悪いとは書いていないが、ウクライナ人とロシア人の紛争の解決を求めている。

 そのうえで、「私達は、ウクライナのギリシャ正教間の分裂が、既存の教会の常識によって克服され、ウクライナの全ての正教徒が平和と調和のうちに生活し、ウクライナのカトリック共同体がこれに貢献し、それによって私達のキリスト教的兄弟愛がますます明らかになることを希望している」と表明している。

プーチン大統領なりの正当性

 これを受け、「2014年のロシアによるクリミア半島奪取から今まで続くロシアによるウクライナ侵攻」というウクライナとNATO側の主張とは裏腹に、ロシア側は「2016年にローマ教皇とロシア正教総主教が止めようとしたウクライナ内戦を、ロシア軍を使って終結させる」と主張しているのである。

 プーチン支持者のロシア政府関係者によれば、「この共同宣言は、ウクライナ国内におけるロシア系住民への圧迫を止めようとしていたが、それが止まらないのでプーチン大統領が正義の行動をしたのだ」という理解に繋がるらしい。

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筆者

酒井吉廣

酒井吉廣(さかい・よしひろ) 中部大学経営情報学部教授

1985年日本銀行入行。金融市場調節、大手行の海外拠点考査を担当の後、信用機構室調査役。2000年より米国野村証券シニア・エグゼクティブ・アドバイザー、日本政策投資銀行シニアエコノミスト。この間、2000年より米国AEI研究員、2002年よりCSIS非常勤研究員、2012年より青山学院大学院経済研究科講師、中国清華大学高級研究員。日米中の企業の顧問等も務める。ニューヨーク大学MBA、ボストン大学犯罪学修士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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