対EUやウクライナ、移民政策……欧州の混迷映すフランス大統領選挙
接戦の行方は「誤差」の範囲内か?
榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト
フランスの大統領選挙は4月11日未明から開票が始まり、中道で現職のマクロン大統領と極右政党のルペン前党首が4月24日に行われる決選投票に進むことになった。選挙では緊張が続くウクライナ情勢への対応も大きな論点となっていて、決選投票に向け2人の候補の間で激しい論戦が予想されている。

候補者の集会で国旗を掲げる支援者=3月27日、パリ Victor Joly/shutterstock
フランス内務省の発表によると、10日に行われた大統領選挙は、中道「共和国前進」のマクロン大統領27.84%、極右政党「国民連合」ルペン前党首23.15%となっている。その結果、この2候補が決選投票に進むことになった。
EUでの指導力発揮訴えるマクロン氏
決選投票に進むことが確実になったという報道を受け、マクロン大統領は「私を支持してくれた全ての有権者に感謝する。あなたたちが私を信頼してくれたおかげだ」と支持者に感謝した。又、決選投票で極右のルペン候補と争う見通しになった事について「必ずしも私に公的に賛成していなくとも、極右の台頭を阻むために私に投票する人々にも敬意を表したい」と述べ、幅広い有権者に支持を呼びかけた。さらにマクロン大統領は、「強いヨーロッパの中にあるフランス、偉大な民主主義国家と共に歩むフランスを目指す」と述べ、引き続きEU=ヨーロッパ連合の中で指導力を発揮するという考えを示した。

パリで10日、大統領選の1回目投票で首位に立ち、支持者の前に姿を見せたマクロン大統領
他方、ルペン候補は「今回の結果に、国民が一つになって立ち上がろうとする希望を感じている。私はすべてのフランス人の大統領になる」と述べ、その上で「民主主義と経済、そして社会を正しい方向に導く」として、物価対策を含めた生活重視の政策を推し進める考えを強調した。また、「フランスの主権とフランス人自ら決定する自由を取り戻す」と述べ、EU=ヨーロッパ連合などとは一定の距離をとっていく姿勢を改めて示した。そして、24日の決選投票に向けて「左派も右派も、それ以外も全てのフランス人に訴える。この連合に参加しよう。皆さんの情熱と信念で勝利できる」と述べ、党派を超えた幅広い支持を呼び掛けた。
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