ロシア経済制裁による物価高騰、定年延長問題、対「欧州」……課題は山積。読めぬ結果
2022年04月16日
フランス大統領選(直接選挙、2回投票制)の1回目投票(4月10日)が終わった。過半数の得票率を獲得した候補者がいなかったので、上位2人による2回目投票(決選投票)が4月24日に実施される(有権者数約4900万人、人口約6600万人)。
決選投票にいどむのは、1回目トップ(得票率27.84%)で再選を狙う中道政党・共和国前進(LREM)」のエマニュエル・マクロン大統領(44)と、2位(同23.15%)の極右政党・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン党首(53)。2017年の前回大統領選と同じ顔合わせだ。
前回はマクロン大統領が決選投票で約66%の得票率で圧勝した。しかし今回は、「まさか」とは思うが、ルペン勝利の可能性が囁(ささや)かれている。
そんななか、今後の票の流れで最も注目されているのが、1回目に3位(同21.05%)だった極左政党・服従しないフランスのリーダー、ジャン=リュック・メランションの票の行方だ。メランションが獲得した約775万票はどこに、どう流れるのか。
メランションは10日の3位決定直後の演説で、数万人の熱狂的支持者を前に、「マダム・ルペンには1票も行かない!」と数回、絶叫調で繰り返した。マクロンの名前こそ、口に出さなかったが、決選投票での「マクロンへの投票」を“指令”した。
ただ、メランション支持者の中には、まったく政治的信念が異なるマクロンへの投票は、たとえメランションの“指令“でも、素直に従えない者が多いはずだ。彼らにとっては、全ての不幸や不満、不平のタネは、現政権の責任だからだ。
ガソリンをはじめとする各種生活用品の値上がりも現政権の責任なら、コロナ禍(約2700万人感染、死者は約14万人)も、洪水、干害などの悪天候も、すべて「現政権の責任」であり、「マクロンの失政」なのだ。
マクロンは就任以来、「三大事件」に直面した。
まず、2018年秋の燃料費値上げ反対に端を発した市民運動「黄色いベスト」の全国的な大規模デモに悩まされた。運動が次第に暴動デモに変質した結果、一般人から見放されて収束に向かった。
次いで発生したのが未曽有の新型コロナの蔓延(まんえん)だ。2020年から21年にかけては2度にわたって長期外出禁止令を出すなど、その対策に追われた。
三番目は、現下のウクライナ戦争だ。ロシヤもウクライナも地続きのフランスにとっては、この戦争はまさしく「ヨーロッパ戦争」。NATO(北大西洋条約機構)軍の一員として、派兵の可能性も覚悟せざるを得ない。
ロシアへの経済制裁の影響も深刻だ。ロシアの原油や天然ガスに頼るフランスをはじめとするEU各国では、すでにガソリン代や燃料費などが高騰し、国民の生活を圧迫している。小麦もロシアとウクライナからの輸入が多い。そのため、パン代の値上げは必至といわれている。
カステックス首相は大統領選を前に、エネルギーなどのロシア依存からの脱却を目的にした「経済レジリエンス計画」を発表した。電気・ガス代が40%以上あがり、電気・ガスの燃料費が売上高の3%以上に達した結果、2022年に営業損失の計上が予想される企業に対し、年度末までの9カ月間、一律に1社当たり2500万ユーロ(1ユーロ=約135円)を上限に、燃料費増加分の5割を国が補填(ほてん)するというが、選挙目当ての大企業救済策とみなされ、国民の不満、不平は収まっていない。
こうした「不幸、不平、不満票」は本来、極右に集まる票でもある。「極右票が増えるのは国内に不満が溜まった時」(政治歴史学者で「極右」の専門家ルネ・レモン)との指摘があるぐらいだ。
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