山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト
元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ロシア経済制裁による物価高騰、定年延長問題、対「欧州」……課題は山積。読めぬ結果
フランス大統領選(直接選挙、2回投票制)の1回目投票(4月10日)が終わった。過半数の得票率を獲得した候補者がいなかったので、上位2人による2回目投票(決選投票)が4月24日に実施される(有権者数約4900万人、人口約6600万人)。
決選投票にいどむのは、1回目トップ(得票率27.84%)で再選を狙う中道政党・共和国前進(LREM)」のエマニュエル・マクロン大統領(44)と、2位(同23.15%)の極右政党・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン党首(53)。2017年の前回大統領選と同じ顔合わせだ。
前回はマクロン大統領が決選投票で約66%の得票率で圧勝した。しかし今回は、「まさか」とは思うが、ルペン勝利の可能性が囁(ささや)かれている。
そんななか、今後の票の流れで最も注目されているのが、1回目に3位(同21.05%)だった極左政党・服従しないフランスのリーダー、ジャン=リュック・メランションの票の行方だ。メランションが獲得した約775万票はどこに、どう流れるのか。
メランションは10日の3位決定直後の演説で、数万人の熱狂的支持者を前に、「マダム・ルペンには1票も行かない!」と数回、絶叫調で繰り返した。マクロンの名前こそ、口に出さなかったが、決選投票での「マクロンへの投票」を“指令”した。
マクロンとメランションは、政治的立場はまったく対局にある。マクロンが体制側の人間なら、メランションは反体制側の代表だ。メランションは選挙運動中、マクロン政権批判を繰り返しており、「マクロンに投票せよ」とは口が口が裂けても言えない立場だ。
ただ、メランション支持者の中には、まったく政治的信念が異なるマクロンへの投票は、たとえメランションの“指令“でも、素直に従えない者が多いはずだ。彼らにとっては、全ての不幸や不満、不平のタネは、現政権の責任だからだ。
ガソリンをはじめとする各種生活用品の値上がりも現政権の責任なら、コロナ禍(約2700万人感染、死者は約14万人)も、洪水、干害などの悪天候も、すべて「現政権の責任」であり、「マクロンの失政」なのだ。
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