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「ウクライナ避難民」保護のために本当に必要なこと~「準難民」制度への問題提起

ウクライナ等の紛争地からの避難民を保護するために必要な制度のあり方とは

小川隆太郎 国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、2022年4月15日の時点でウクライナからの国外避難民の数は約484万人に及ぶ (参照)。ウクライナの人口はクリミアを除き4159万人(2021年時)とされているから、9人に1人以上が国外避難民となっているという事態である。

 このような情勢を受け、日本政府は、紛争地から逃れたウクライナ避難民は難民に該当しないとの立場を前提に、紛争地からの避難民を保護するため「準難民」制度を創設する動きを見せている。

 人権・人道の観点から国際社会の一員としての役割を果たすという意味で、ウクライナを初めとする世界の紛争地からの避難民を、日本が受け入れ、積極的に保護する方針自体には異論がないだろう。しかし、「準難民」制度の創設については以下の二つの点から問題提起がなされている。

拡大佐賀空港に到着して歓迎を受けるウクライナからの避難民2人=2022年4月15日、佐賀市川副町犬井道

難民として迅速に保護を進めるべき

 第一に、ウクライナ避難民については、難民として保護することが可能な場合があるから、「準難民」制度の検討の前に、または同時に、まずは難民として迅速に保護することを進めるべきではないかという点だ。

 法的な意味での「難民」は、日本も批准する難民条約にその定義が規定されている。「難民」の要件としては、「人種・宗教・国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有すること」が必要と規定されている(太字は筆者)。

 つまり、単に迫害を受けるおそれがあるだけでは駄目で、その迫害が条約上の理由に基づく必要があるとされている。これが議論の出発点となる。こうした観点から、日本政府のように、今回のウクライナに対するロシアによる武力攻撃は、ウクライナ国内で生活する住民に対する無差別攻撃なのだから、条約上の理由に基づく迫害ではなく、したがって「難民」とはいえないという見解が、一部専門家から示されている。

 しかし、一方で、難民条約の実施機関である国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は2016年のガイドライン第12号で、条約上の理由は、単に寄与要因(contributing factor)であることで足り、迫害を受けるおそれの主要なまたは唯一の原因である必要はないとして、戦争、武力紛争であっても、条約上の「難民」に該当しうることを表明している。

 結局、この議論の決着は、ウクライナ避難民たる難民申請者に対するロシアによる迫害が、そのロシアに対する批判的な政治的意見やウクライナ国籍、特定の人種であることなど、条約上のいずれかの理由に起因するものといえるかという事実認定の問題となる。その答えは、個々の難民申請者の個別事情によるため、一概に条約上の「難民」にあたるかどうかという解は存在しない。

 ただし、少なくとも「ウクライナ避難民は条約上の難民には当たらない。」という一般化が誤りであることは間違いがない。したがって、ウクライナ避難民についても、条約上の「難民」に該当しうることを説明し、条約上の理由があるとして難民申請があれば、 個別事情に応じて「難民」として迅速に保護をするべきだということになるが、国際基準に適(かな)った難民保護を与えるためには、ガラパゴス化している日本の難民認定制度を国際基準に則った制度・運用に改めることが必要になる。

拡大ウクライナから外国に脱出する人たち Yanosh Nemesh/shutterstock.com

※ロシアのウクライナへの軍事侵攻に関する「論座」の記事を特集「ウクライナ侵攻」にまとめています。ぜひ、お読みください。

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筆者

小川隆太郎

小川隆太郎(おがわ・りゅうたろう) 国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長

1984年生まれ。早稲田大学大学院法務研究科卒業。2014年弁護士登録、東京共同法律事務所(新宿区新宿御苑前所在)入所。学生時代より国際人権問題、難民問題に取り組む。2022年4月より認定NPO法人ヒューマンライツナウ(HRN)事務局長。その他、全国難民弁護団連絡会議(全難連)世話人、特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター(JVC)理事等。身近な法律トラブルの相談から、公益訴訟、国連人権メカニズム等を活かした政策提言活動まで幅広く活動する。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです