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支持率上昇のプーチンが「勝利宣言」する可能性は高い!?~マリウポリ陥落は時間の問題か

NATO陣営の後手に回る武器支援と誤算の多い対露制裁が招いた不幸

酒井吉廣 中部大学経営情報学部教授

 4月18日、ロシア軍のウクライナ東部への攻撃は一段と激しくなり、ゼレンスキー大統領の首席補佐官は対ロ戦争が「第二フェーズ」に入ったと宣言した。米バイデン政権を中心とするNATO(北大西洋条約機構)諸国は、その約1週間前にウクライナへの軍事支援を増やすとともに対ロ経済制裁の強化を発表したのだが、すでにロシア軍がウクライナ東部のマリウポリを制圧する段階でのこともあり、遅きに失した感は拭えない。

拡大マリウポリ Vladyslav Babenko/shutterstock.com

プーチン政権打倒の雰囲気は感じられず

 バイデン政権これまで、西側諸国が一致して最大限の経済制裁をしたかのような発表を続け、プーチン政権崩壊は時間の問題と言わんばかりの自身満々の雰囲気だった。だが、今になって対ロ経済制裁を強化するというのは、ロシアへの制裁が有効ではなかったことを示唆しており、今後はバイデン政権による発表の何が真実なのかに、フィルターをかけてみる必要も出て来た。

 ルーブルの対ドルレートは本稿執筆時点(4月19日)で81ルーブルで、もはやウクライナ侵攻前のレベルが定着しつつあり、為替相場のレンジも狭く安定的になっている。制裁強化策としてロシア最大のズベルバンクをSWIFT(国際銀行間通信協会)から外すという具体策が発表された後も、ルーブルの急落は起こっていない。

 ウクライナ侵攻当初は70%だったプーチン大統領の支持率は4月の第1週には81%に上昇しており、ロシア国内で西側メディアが報じるような政権打倒の動きが出てくる雰囲気は今のところ感じられない。過去の東欧諸国のクーデター等の背景には、米CIAの存在があったが、これもいまだ機能していないということだろう。

 ゼレンスキー大統領はNATO諸国の武器支援を前提に、マリウポリのウクライナ軍が全滅した場合には停戦協定は中止だという強気の発言をしている。しかし、西側メディアや専門家の中には、プーチン大統領が5月9日の対独戦勝記念日に「勝利宣言」するつもりだという“風評”を報じ始めている。プーチン大統領ははたして勝利宣言に踏み切るのだろうか。

拡大ビデオ会議で、ウクライナ侵攻を正当化しつつ、西側を非難するロシアのプーチン大統領=ロシア国営ノーボスチ通信が動画サイト「RUTUBE」で配信した動画から

過去最低を更新したバイデンの支持率

 4月13日に発表されたCNBCの世論調査によると、バイデン大統領の支持率は38%と過去最低を更新、不支持率は53%と半数を超えた。主な理由はインフレを抑止できない経済政策への不満だが、背景にはウクライナ紛争への対応の不十分さがある。

 しかも、アメリカの世論はプーチン大統領を強く嫌っていても、ウクライナ紛争よりも国内問題の解決の方が重要だとする基本的な見方を終始一貫して変えていないため、バイデン政権としては、現実問題として米軍を動かすという方針を出し難いのも事実だろう。

 こうしたなか、夏の中間選挙に向けて、民主党は焦りを募らせている。バイデン政権は「ウクライナよりも国内政治にフォーカスを」と、バイデン大統領の選挙陣営世論調査担当が言い出す始末だ。

 4月14日にはロシア海軍の黒海艦隊旗艦である「モスクワ」が沈没。米国防総省のカービー報道官は同日のCNNの番組で「ウクライナが対艦ミサイルで撃沈したとみられる」旨の見方を示し、瞬く間に世界に伝わった。

 ところが、翌15日の米海軍メディアは、第2次世界大戦時の軍艦がニューヨーク州北部の保存場所で気象現象により沈没しかけている旨をトップ記事で報じる一方、ミサイル巡洋艦モスクワの沈没については「Russian Military’s damaged Black Sea flagship sinks」とローキーの見出しで、記事内容も「沈没の真相はまだ確定できていない」と報じただけだった。

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筆者

酒井吉廣

酒井吉廣(さかい・よしひろ) 中部大学経営情報学部教授

1985年日本銀行入行。金融市場調節、大手行の海外拠点考査を担当の後、信用機構室調査役。2000年より米国野村証券シニア・エグゼクティブ・アドバイザー、日本政策投資銀行シニアエコノミスト。この間、2000年より米国AEI研究員、2002年よりCSIS非常勤研究員、2012年より青山学院大学院経済研究科講師、中国清華大学高級研究員。日米中の企業の顧問等も務める。ニューヨーク大学MBA、ボストン大学犯罪学修士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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