落合貴之(おちあい・たかゆき) 立憲民主党衆院議員
1979年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。三井住友銀行行員、衆議院議員江田憲司秘書などを経て、2014年衆院議員初当選、現在3期目。衆議院経済産業委員会野党筆頭理事、党政調副会長など歴任。著書に『民政立国論 一人ひとりが目指し、挑み、切り拓く新世界』(白順社)。東京6区。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
平均930円から年に100円ずつ上げて全国一律1500円に。財源は国庫から支出
国内外に山積する課題に政治はどう向き合い、解決すればいいか――。現役の国会議員が政治課題とその解決策について論じるシリーズ「国会議員、課題解決に挑む~立憲民主党編」では今回から落合貴之衆院議員による緊急連続対談「いま必要な経済政策は?」を始めます。
初回の対談相手は末松義規衆院議員です。最低賃金の1500円への引き上げは日本経済回復の「万能薬」と言う末松議員。そのわけと立憲民主党の政策について、とことん聞きます。コメント欄にぜひ、ご意見をお寄せください。(論座編集部)
(構成 論座編集部・吉田貴文)
末松義規(すえまつ・よしのり) 立憲民主党衆議院議員
1956年生まれ。一橋大学商学部卒業後、外務省に入省。1996年衆院議員に旧民主党から立候補し初当選。民主党政権で内閣府副大臣、復興副大臣、首相補佐官などを歴任。現在当選7回。著書に『官邸、内閣府にいたからこそ書ける いま、日本にある危機と希望』など。東京19区
落合貴之 日本の経済がますます苦境に陥っています。欧米の金融政策の影響で過度の円安が進み、やウクライナ情勢もあって物価もじわじわ上がっている。その一方で、働く人の給料は上がらず、今後、生活がますます苦しくなることが予想されます。
にもかかわらず、発足から半年以上がたつ岸田文雄政権は、有効な経済政策をうてていません。政権発足時に掲げた「新しい資本主義」も、依然として中身がはっきりしない。
私はいま、立憲民主党の経済政策を担当し、夏の参院選に党としてどんな経済政策を打ち出すか日々、考えていますが、「論座」でも「国会議員、課題解決に挑む~立憲民主党編」の特別バージョンとして、「緊急連続対談・いま必要な経済政策は?」をはじめることにしました。党内の“専門家”との対談を通じて、経済の現状、党の政策について論じたいと思います。
初回の対談の相手は衆院議員の末松義規さん。末松さんは早くから最低賃金に着目し、その引き上げこそが経済をよくすると主張してきました。昨年の衆院選で立憲民主党の公約に最低賃金アップを盛り込みま、この夏の参院選でも公約の一つになります。そもそも末松さんが最低賃金に注目したのは、どうしてですか。
末松義規 アメリカや中国、欧州の国々のGDPが上がっているのに、日本だけがこの30年間、停滞し続けています。これに連動するかたちで、賃金もアメリカ、中国、欧州では2倍から数倍も上がっているのに、日本だけが下がっている。日本経済が停滞しているのは、生産側に問題がるというより、働く人たちの給料が下がり、モノを買う余裕がなくなっているのが原因です。
とすれば、消費力の源泉である給料を上げることが不可欠です。とはいえ、いきなりあらゆる人の賃金を上げることができません。では、どこから手を付けるか。
日本は、新自由主義を推し進めたアベノミクスの悪影響で、富裕層の所得が増える一方、中間層や低所得層の貧困化が進み、国民の経済格差が拡大しました。生活の安全保障となる最低賃金を見ても、先進国の中で日本は最低レベルです。
そこで、まずはこの最低賃金に注目し、これをしっかりと上げていく。それが日本の需要を回復させ、経済を回復させる第一歩だと考えたんですね。今から4年ほど前のことです。
落合 最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。最低賃金の額は都道府県ごとに決められ、違反者には罰則や罰金が科せられます。
末松 時はさらに遡るのですが、「働き方改革」にからみ、街頭で「日本人は働きすぎ。労働時間をもっと減らそう」と演説していたら、若者の集団が真剣な顔をして私にくってかかってきたことがあったんです。「労働時間が減らされたら、俺たちは食えない」という彼らの批判に、私は反論できませんでした。
確かに、労働単価が安ければ、長時間働かなくては食べられない。ならば、まずは最低賃金を上げようと思い立ち、街頭でもそう訴えていると、今度は賃金を払う中小企業の事業主の人たちから、「中小企業を潰す気か」と怒られた。これに対しても、有効な反論ができませんでした。
さて、どうしたものかと悩んだ末に考えついたのが、最低賃金を引き上げるが、財源は「中小企業に負担をかけない」という観点から、国庫補助金にする、という方法でした。
落合 現在、日本の最低賃金は平均930円ですが、これを引き上げるわけですね。
末松 全国一律最低賃金1500円を実現したい。現在の水準から年に100円ずつぐらい6年間上げると、全国平均で1500円になる。さらに7年目に100円あげると、全国一律で1500円が達成されるという計算です。
全国一律最低賃金1500円が地域間格差を考えてても一番平等。同一労働同一賃金にも合致する。1500円を達成すれば、国庫補助は打ち止めにします。
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