落合貴之(おちあい・たかゆき) 立憲民主党衆院議員
1979年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。三井住友銀行行員、衆議院議員江田憲司秘書などを経て、2014年衆院議員初当選、現在3期目。衆議院経済産業委員会野党筆頭理事、党政調副会長など歴任。著書に『民政立国論 一人ひとりが目指し、挑み、切り拓く新世界』(白順社)。東京6区。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
平均930円から年に100円ずつ上げて全国一律1500円に。財源は国庫から支出
落合 最低賃金について、自民や公明の政権与党は動きが鈍いですね。
末松 経団連や日本商工会議所といった大企業の人たちが、「1000円以上の最低賃金は絶対に認めない」と自民党にハッパをかけているからです。なので、自民党は年収196万円が限界なんです。しかも、現在の平均930円から何年後に1000円まで上がるかというと、年間で3%ずつというから、25円ずつ上がったとして、3年後にようやく1000円です。
こんなペース、金額だと、日本経済はますます不景気になる。落合さんが冒頭で指摘された通り、日本では今、石油の高騰をはじめ、様々な物価が上がり、庶民の暮らしが本当に厳しくなっている。最低賃金のアップは喫緊の課題です。
落合 給料があがらないのに、生活に必要なモノの値段があがったら、暮らしていけませんね。
末松 現実問題として、日本の賃金事情は深刻です。たとえば、平均賃金でみると、日本よりも韓国の方がかなり上です。数年前に抜かれました。最低賃金をみても、日本の18県よりも韓国の方が高い。
経団連に話を戻しますが、彼らは「最低賃金なんかあげると、企業競争力が弱まり、国際競争力が失われて、日本経済はますます悪くなる」と言います。でも、競争相手のアメリカや欧州では、最低賃金が日本よりはるかに高いのに、企業の競争力は日本企業を上回っています。根拠のない主張です。
よく言われることですが、平成時代の日本企業の凋落は著しい。時価総額の世界ランキングを見ると、平成元年(1989年)には日本企業がベスト10に7社、ベスト20に14社も名を連ねています。現在(2021年)はベスト10にもベスト20にも日本企業は見当たりません。こんな企業群にしてしまったことについて、経団連の責任は重いですよ。
我々としては、経団連の主張にしっかり反駁(はんばく)しながら、本当に重要なのはサラリーマン6000万人のうち、低所得で苦しむ人が2000万人もいるという実態を直視し、彼らの所得を引き上げて、経済の需要を掘り起こし、経済停滞からの反転をはかる政策を訴えていきたいと思っています。
政治献金を数10億円もらうことで、経団連の意向に隷属化する自民党と違って、幸か不幸か立憲民主党は経団連といった大企業グループから一銭ももらっていません。彼らの主張にとらわれず、自らの政策を推進できます。
落合 国内の買う力が下がってきたので、大企業は外で売らないと生き残れないと、海外進出を進めたわけですが、それって「持続可能」ではないと思います。国内の購買力のアップを、大企業の協力も得て実現することが、これから極めて重要になります。
実は年明けの「論座」の論考「『失われた30年』を反転させる2022年に アベノミクスの『負の部分』を修正」で、賃金を上げるための施策に知恵を絞らなければならない、と論じました。岸田政権は賃金上げ政策については、どう見ていますか。
末松 政府は2022年税制改正で、従業員の賃金を増やした場合、税額控除の上乗せ措置を受けられる制度を導入しましたね。でもこれって意味がないんですよ。