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令和臨調スタート!茹でガエル日本から脱却するために何が必要か~小林喜光・星浩対談

ウクライナ侵攻後の激動する世界でどう生き抜くか。わが国の「国家価値」とは何か……

星浩 政治ジャーナリスト

「グローバル・ガバナンス」の無力さに敗北感

小林 うっかりすると、飲み込まれかねないほどの強烈な蛇でした。我々の世界に対する見方を変えないといけないし、日本のあり方も考え直さないといけない。国の安全保障を、経済安全保障も含めて相当、見直す必要があると感じています。

 実際、千島列島や北海道周辺海域ではロシアが軍事活動を活発化させているし、最近の北朝鮮や中国の軍事的動向も気掛かりです。私はイスラエル建国25周年にあたる1973年に、イスラエルに留学していましたが、当時中東が世界で最も危検な地域だと言われていました。しかし、今や極東が核の問題も含めて最も危うい地域だと認識しなければいけません。

 もちろん、プーチンという一人の人間が、世界を蹂躙する行動をとることは許されません。しかし、現実にはウクライナで目を背けたくなるような人道に反した侵略行為が平気でおこなわれている。それに対して、我々が依って立つ民主主義政治はプーチン一人に手をこまねいている。

 第三次世界大戦をさけるべく軍事介入を見送ったアメリカは“情報戦争”や“武器供与”といった別の形でウクライナを支援していますが、国連非難決議案は採択されたものの法的拘束力を伴う決議案の採択までには至っていないのが現実です。我々が戦後つくってきた「グローバル・ガバナンス」とは一体何だったのか、敗北感に襲われます。

 ウクライナ侵攻が、プーチンが起こした戦争、侵略行為であり、批判されるべきであるのは間違いありません。一方で、そもそもなぜ、プーチンがこうした行動に出たかというと、NATO(北大西洋条約機構)の拡大に反発をしたからと言われています。

 NATOも国連も、第2次大戦後、各国が安全保障を追求するなかで、集団で守りあうことが有効だという考えからつくった制度です。人類は少しずつ進化しているという見方がある反面、今回のように一人の指導者の蛮行で脆くも崩れてしまう。人間の知恵には限界があるのでしょうか。

拡大星浩さん=2022年4月15日、東京都千代田区丸の内の三菱ケミカルホールディングスで

人間の悪い面を抑える方法を磨くことが必要

小林 星さんが冒頭で言われた民主主義に照らしていうと、現在、“西側”の民主主義は相当ポピュリズム化しています。他方、“西側”に属さない中国やロシアといった権威主義的志向を持つ国々がまだまだ根強く存在している。その点を我々はあらためて認識すべきだと思います。

 つまり、民主主義は「アプリオリ」に“正しい”ものではないということです。民主主義を楽天的に称揚するだけではなく、性悪説というか、人間の悪い面をどう抑えるかという方法をもっと磨いていかないと、独裁者や権威主義者が力を握って、民主主義を毀損する事態がいつまでも続くのではないでしょうか。

 気候変動やパンデミックといったグローバルな課題について、しっかり議論する場が今ほど必要な時はありません。しかし、現在の国連は十分機能しているといえません。コロナパンデミックやワクチンへの対応、CO₂の問題でも統一した方向性を打ち出せないし、ましてやウクライナ戦争については、なんら実効力を発揮できていないことからも明らかです。

 プーチンの暴挙を止める軍事介入以外の一つの解決策として今回、“西側”から出てきた答えが「経済的制裁」です。しかし、制裁をすれば“返り血”を浴びることもあり、各国とも100%の制裁には踏み切れない。また、“西側”が結束しても、中国やインドといった国々がロシアに対する抜け道にもなり得るし、漁夫の利を得てしまう懸念もあり状況は複雑です。

 八方ふさがりですね。

課題はグローバルだが、規制の主体はナショナル

拡大小林喜光さん=2022年4月15日、東京都千代田区丸の内の三菱ケミカルホールディングスで
小林 今はとにかく、プーチンを支える権威主義を抑えることに集中すべきだとは思いますね。もはやボーダレスになった世界で、ボーダーを腕力で動かすなどということが21世紀にあってはならない。

 私は21世紀のネット社会においては、政府も民間も一体となって活動するしかないと感じています。それは、経済もさることながら、むしろ政治に必要です。「善」や「夢」を求めて生きていく人たち、そうした同じベクトルを持った人たちの集合体としての社会を、どうやって構築するかではないかと思っています。

 パンデミックにせよ、戦争にせよ、経済にせよ、課題はグローバルになっているのに、それを規制していく主体はいまだにナショナルです。国連をはじめグローバルに規制する機関がないわけではないけれど、非常に弱い。その問題を克服するというのが大きな課題だと思います。

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筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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