大濱﨑卓真(おおはまざき・たくま) 選挙コンサルタント
1988年生まれ。青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。衆参国政選挙や首長選挙をはじめ、日本全国の選挙に与野党問わず関わるほか、「選挙を科学する」をテーマとした選挙に関する研究も行う。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
表面上の平穏さの裏側に垣間見える衆院選をにらんで参院選を戦うという動き
昨年の衆院選で想定外の敗北を喫し、泉健太新代表のもとでも政党支持率が伸び悩む立憲民主党。なんとか「浮上」のきっかけが欲しいところですが、野党のメディア露出が増える通常国会開会中も、政党支持率が上がる気配はありませんでした。
毎日新聞が「立憲、落選議員「格付け」」と報じたように、総支部長と調整枠とで分けられた元議員、現職や立候補を狙う新人などの間で、足並みを揃えるのが厳しい都道府県も散見されます。かねてからいわれている、党のガバナンスの問題も相まって、足元がおぼつかない状況での参院選となっています。
資金力の問題もあります。参院選は衆院選の小選挙区よりも広い都道府県選挙区で戦うため、候補者個人や陣営の強さよりも、党勢の影響をより強く受けます。広報戦略に必要な資金も格段にかかる。限りのある資金を、広報戦略上、どこに集中投下していくのかが鍵になります。
話題づくりにも課題が残ります。与党と異なり、そもそも野党はメディアの露出が少ない。選挙になれば、人目をひく戦略、露出を促進する「話題づくり」が必要です。立憲民主党は昨秋の衆院選以後、(悪いニュースも多いとはいえ)なにかと露出が多い日本維新の会と比較して、そもそも露出が少ないという声もあります。
以上、「ガバナンス問題」「資金力」「話題づくり」という党全体の問題に目を向けて、適切な対応をしない限り、参院選は厳しい結果に終わると筆者は見ています。福山哲郎・前幹事長の地元である京都選挙区など、象徴的な選挙区で議席を失うことになれば、党勢衰退に直結しかねません。党全体として、「背水の陣」という認識を共有する必要があるでしょう。
さらに、先述した衆院選落選組の取り扱いも整理していかなければ、参院選落選組からの衆院選鞍替え組との競合など、新たな火種を抱える可能性もあります。候補者(や総支部)の活動量をもとに公認決定をするプロセス自体は正しいとはいえ、衆院選をにらんで党の体制を整備しないと、再び「分裂」として痛い目に遭うかもしれません。
前回衆院選における比例の得票数は、立憲民主党の1149万票に対して日本維新の会は805万票。票差にして約344万票、得票率では約6ポイントの差が開いていました。衆院選後は話題づくりでは、維新が立憲を上回っているようにもみえますが、一方で現職議員の失言問題や経歴詐称疑惑問題などもあり、党勢が右肩上がりとは言い難い状況が続いています。
世論調査での政党支持率や比例投票先においても、衆院選直後こそ日本維新の会が立憲民主党を上回っていましたが、参院選が近づくにつれて差が詰まってきているか、すでに立憲民主党が再度「相対的に」上回っている状況です。
「相対的に」というのも、立憲民主党と日本維新の会がともに右肩上がりで支持率を争っているわけではなく、右肩下がりの中で争っているのが実態です。増加する無党派層が選挙になると支持(投票)してくれるという「選挙ボーナス」に期待するのではなく、通常国会以降、両政党に対する期待が着実に薄れているという事実は、厳粛に受け止めるべきでしょう。
ただ、日本維新の会の参院選に向けた戦略には、興味深い点がいくつかあります。