組織政党の公明党と日本共産党は議員教育でどのように創意工夫しているのか?
「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【5】
岡野裕元 一般財団法人行政管理研究センター研究員
「論座」では「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」を連載しています。1999年に自民党と連立を組んで以来、民主党政権の期間をのぞいてずっと与党だったこの党はどういう政党なのか、実証的に研究します。5回目は議員への教育に関して、公明党と同じく組織政党である共産党について論じます。(論座編集部)
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記者会見する公明党の山口那津男代表=2022年5月24日、東京都千代田区
全国政党にとって、各地にいる地方議員をまとめ、党内の一体性やガバナンスを維持するためには、何が重要な要素であるのか。日常的な党内コミュニケーション(第3回「融合する公明党の国会議員と地方議員~党運営のDX化が支える議員活動」参照)や意思決定(第4回「公明党は地方議員の声をどう聞いているのか~中央と地方統合の場・中央幹事会の実相」参照)のあり方、底流にある積み上げてきた歴史や醸成された党内文化だけでなく、議員教育(研修)も重要な役割を果たす。しかし、議員教育(研修)の実態については、政治学の研究を参照しても、あまり明らかにはなっていない。
そこで本稿では、公明党東京都本部と日本共産党京都府委員会の例をもとに、前半で公明党、後半で同じく組織政党である共産党の議員教育について検討する。詳しくは後述するが、両党にとって東京と京都は象徴的な地域だからだ。
組織政党であっても、都道府県本部(公明)や都道府県委員会(共産)ごとに、活動にバリエーションがある。地方組織は、単に党本部(公明)や中央委員会(共産)からの「方針に従ってそのまま動く」という存在ではなく、地域の実態にあわせた創意工夫も展開される。
特に日本共産党には、第22回党大会(2000年11月24日)で改定された党規約第17条に、「地方的な性質の問題については、その地方の実情に応じて、都道府県機関と地方機関で自治的に処理する」との規定がある。この「自治的」という文言は、党内ガバナンス(中央・地方関係)でも相当に重みがある。
公明党の議員教育は……
公明党の「初当選した国会議員の教育については、党本部が主導して特別な研修プログラムを準備し、実施するわけではない。各々の新人議員は、国会のそれぞれの場において先輩議員から学ぶことになる。特定の先輩国会議員が新人国会議員の面倒をみる決まりはないが、地域や都道府県単位での国会議員同士のつながりは強いようである」(岡野裕元「公明党の立体的政策形成――「ヨコ」関係の軸となる国会議員・地方議員・事務局との協働ネットワーク――」 奥健太郎・黒澤良[編著]『官邸主導と自民党政治――小泉政権の史的検証』吉田書店、2022年、p.454)。
一方、地方議員教育に対しては、「各都道府県本部単位で新人議員研修会が必ず行われる」(同書、p.455)。「県本部の幹事長や経験のあるベテランの地方議員が講師となり、新人議員に対し、議員活動(例、具体的な議員としての動き、公明党の議員としての姿)の〝イロハ〟について日常活動まで丁寧に教える」(同書、p.455)。
また、3回目の記事「融合する公明党の国会議員と地方議員~党運営のDX化が支える議員活動」で取り上げた党内イントラについては、実は世代間での利用状況に差がある(同書、p.454)。そのため、党本部主催でIT講習会を実施し、議員のスキルアップを行っている(同書、p.454)。
公明党地方議員のうち、10分の1以上が東京都内選出である。実際、公明党は都議選に国政選挙並みの力を入れている。そこで、東京都における公明党の地方議員教育について、吉田富雄・公明党東京方面・都本部事務局長に議員教育の実態についてお聞きした(2022年3月30日インタビュー(筆者取材)以下同じ)。
「党員の義務」に則って活動

公明党東京都本部が入る公明会館=2022年3月30日、東京都新宿区南元町、筆者撮影
公明党の党員は各支部会に所属。決められた「党員の義務」に則(のっと)って活動する。具体的には、①党の綱領及び規約を守ること、②党の政策及び方針に従うこと、③積極的に党活動に参加すること、④党費を納め、機関紙を購読すること――である。
例えば③については、具体的にどの活動に参加しなければならないという決まりはない。支部会の活動は、様々な会合の開催、(署名)運動やアンケート活動などだ。支部会活動の頻度について、特別の定めはなく、様々である。活動が活発な支部では毎月活動しているが、そうでない支部は年4回(地方議会の各定例会が終わった後)だ。支部会独自の活動として、清掃活動や施設への慰問なども行われている。
党員の学習の機会は、④にあるように『公明新聞』の購読が中心だという。とはいえ、なかには『公明新聞』を購読していない党員も存在するという。
『公明新聞』は、「支部会のために」と「党員講座」という記事を連載、学習の機会も設けている。例えば、「党員講座」では、「伝えたい公明党の実績」、「特集『私も読んでいます公明新聞』」、「知っておきたい カタカナ用語&アルファベット略語」、党公式チャンネル動画、都議選などに関する記事が並んでいる。
「支部会のために」では、その時々の政局や政治課題に関連する記事が掲載されている。「公明党の訴えが社会を変えた/主な実績から」(2021年9月12日)、「経済再生へ政策断行/公明、提言の実現に総力」(2021年11月14日)、「公明の主張大きく反映/21年度補正予算、22年度予算案・税制改正から」(2022年1月16日)といった具合である。
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