始まりは2014年のマイダン革命とロシアの侵略
2022年06月03日
2022年2月24日早朝、ドニプロ(ドニエプル)川を望む古都キーウ(キエフ)の人々は、ロシアのミサイル攻撃を受け恐怖のどん底にたたき落とされた。前日の夜までシェフチェンコ国立歌劇場では、オペラが催されていたし、ロシア軍が国境に集結していることには不安を感じつつも通常通りの生活をおくっていた。
ロシア側は、ゼレンスキー大統領が逃亡したとの虚偽の情報を流したが、ゼレンスキー大統領はすぐさまSNSで自分がキーウにとどまっている事、ウクライナ軍は各地でロシアに対して徹底抗戦を行っていることを世界に発信した。その後のウクライナ軍の頑強な抵抗は世界を驚かすことになる。
ロシアの侵攻に対して、国連安全保障理事会は全く機能せず、国連は何をしているのかという疑問を人々に投げかけた。そもそも国連は、1945年に米国・ソ連・中国・フランス・英国が世界の警察官として一体となって国際の平和と安全を確保するとの構造で作られた組織であって、その警察官であるべきロシアが明確な侵略を行う事は全く想定していない。ロシアは、国連安保理の常任理事国であって、あらゆる決定を阻止する拒否権を有しているのだ。
国連に代わって実質的な役割を果たしているのは、日本・米国・英国・ドイツ・フランス・イタリア・カナダの7カ国からなるG7であり、NATOという軍事同盟であることは承知のとおりである。日本はG7の一カ国であってその動向は世界に注目されている事も論を待たない。本稿では、ウクライナとロシアの関係を日本が大きな役割を担うG7の観点から整理してみたい。
まず、ウクライナとロシアがどのような歴史的関係にあったかを簡潔簡単に記してみることにする。
ウクライナは、9世紀から13世紀にかけて繁栄したキーウを首都とするキーウ・ルーシー公国にその始まりを求める。当時欧州にあって大きな勢力を誇った国である。それが13世紀にモンゴルの襲来により崩壊。100年のモンゴルの支配が終わったのち後14世紀から18世紀にかけてウクライナの地の大部分は、ポーランド・リトアニアの影響下に置かれる。
ロシアがウクライナに進出してきたのは、17世紀末のピーター帝の時代であって、ロシアが現在のウクライナの大部分を領土に加えるのは、18世紀にポーランド分割を行ったエカテリーナの時代に過ぎない。ロシアは、ウクライナとロシア双方の始まりをキーウ・ルーシー公国に求め、その後この公国がモスクワを中心とする東ルーシーとポーランド・リトアニアの支配下に置かれた西ルーシーに分かれた後、ピーター帝によって再統一されたとの史観をとる。
だが、ウクライナ人からしてみれば後にロシアを名乗るモスクワ公国とキーウ・ルーシー公国は全く別の存在であって、同根の歴史を有するとするロシアの歴史観は全く受け入れられないのである。
言語的にも、ウクライナ語とロシア語は、古ロシア語として同じルーツを持つとする学説があるのは事実だが、ポーランドの影響下にあったことからウクライナ語は言語としてもむしろポーランド語に近い響きを有するのが実情である。
宗教的にも確かに10世紀にキーウ・ルーシー公国のウラジミール大公がビザンチン帝国よりキリスト教(正教)を受け入れ、それがその後、モスクワ公国そしてロシアに伝播したことは事実であるが、キーウにあった正教会は、モンゴル及びポーランドの影響下にあっても、コンスタンチノープルの管轄下にある組織として存続していたのであって、モスクワの総主教庁の下に置かれることになったのは、17世紀の末の事である。
また、ポーランドの影響下にあった西部には、ギリシャ・カトリック教会という儀式・典礼は正教会を踏襲しつつもローマ教皇の首位権を認めるという大きな勢力があり、さらに1991年の独立後には、ウクライナの正教会内部においてもモスクワ総主教庁から独立したキーウを中心とするウクライナ正教会が樹立されている。このウクライナ正教会は2019年には、コンスタンチノープルの全地総主教から正式な教会としての認知を受けている。
ソ連時代にウクライナ語は抑圧され、1928年から1933年にかけては、スターリンによる無謀な集団農業政策の失敗と食物強奪により400万ともいわれるウクライナ人が餓死する惨劇を生んでいる。ホロドモールといわれる大飢饉である。ウクライナは第1次と第2次の世界大戦の双方において独立運動を起こすが、ボリシェヴィキとソ連による徹底的な弾圧を受ける。ウクライナが独立を手に入れたのは、ソ連邦が崩壊した1991年の事である。
独立後のウクライナにおいては、西欧との連携を求める親西欧派とロシアとの連携を求める親ロシア派との抗争が続いた。しかしその抗争も2014年に起こったマイダン革命(ウクライナ騒乱)の結果、親ロシア派といわれたヤヌコビッチ政権が倒された時に終わりを告げる。プーチンがこの時、
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