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防衛費増額にリアルはあるか~平和主義者・石橋湛山の「再軍備論」から考える

朝鮮戦争に際して石橋はなぜ、9条「戦争の放棄」の部分的停止を提唱したのか

鈴村裕輔 名城大学外国語学部准教授

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朝鮮戦争と論文「第三次世界大戦の必至と世界国家」

 1950(昭和25)年6月25日に朝鮮戦争が起きると、石橋は7月20日に朝鮮戦争と世界情勢の推移を分析した論文「第三次世界大戦の必至と世界国家」を脱稿する。

 論文の中で石橋は、米ソ関係やアジアにおける各国の利害に基づき、朝鮮戦争の発端やその後の戦況の推移などを的確に推測している。

 さらに、石橋は1950年7月1日に毎日新聞が掲載した、朝鮮戦争をもって第三次大戦の始まりとするバートランド・ラッセルの見解を支持する。

 結果的に、石橋やラッセルが危惧した、朝鮮戦争を契機とする第三次世界大戦の勃発は回避された。その意味で、石橋の懸念は杞憂(きゆう)であった。しかし、「第三次世界大戦の必至と世界国家」は、戦局の推移に対する石橋の的確な見通しだけでなく、第二次世界大戦後の日本の針路と国際社会に対する石橋の態度の変化を示している点で興味深い。

一時的な措置として再軍備を支持

拡大日本国憲法の第9条。1946年11月3日に公布された原本(国立公文書館提供)から
 第二次世界大戦後の日本の針路と国際社会について、石橋は日本の武力や交戦権の放棄を肯定し、日本国憲法第9条の積極的に支持するとともに、国際連合を中心とする国際秩序を高く評価していた。

 しかし、「第三次世界大戦の必至と世界国家」において、石橋は従来の立場を変えている。

 日本国憲法では、第9条第1項において、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」とし、第二項では「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と、戦力の保持と行使、国の交戦権を否定している。

 これに対して、石橋は、世界に恒久平和をもたらすためには、米ソ両陣営の対立を打破しなければならず、そのためには一時的な措置として、「少なくとも東洋において、ソ連と中共とを十分に押えるに足るだけの規模」による再軍備を支持する。

 ただ、日本の再軍備を許容するということは、日本国憲法第9条の規定に背くことになる。そこで、石橋は、「例えば『世界に完全なる安全保障制度が確立されるまで』というような期限をつけて、しばらく効力を停止する」ことを提案する。

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筆者

鈴村裕輔

鈴村裕輔(すずむら・ゆうすけ) 名城大学外国語学部准教授

1976年、東京生まれ。名城大学外国語学部准教授、法政大学国際日本学研究所客員所員。法政大学大学院国際日本学インスティテュート政治学研究科政治学専攻博士課程修了・博士(学術)。専門は比較文化。主著に『メジャーリーガーが使いきれないほどの給料をもらえるのはなぜか?』(アスペクト 2008年)、『MLBが付けた日本人選手の値段』(講談社 2005年)がある。日刊ゲンダイで「メジャーリーグ通信」、大修館書店発行『体育科教育』で「スポーツの今を知るために」を連載中。野球文化學會会長、アメリカ野球愛好会副代表、アメリカ野球学会会員。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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