自民党・民主党は新人議員をどう教育してきたのか?~中央政治大学院の役割は
「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【7】
岡野裕元 一般財団法人行政管理研究センター研究員
「論座」では「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」を連載しています。1999年に自民党と連立を組んで以来、民主党政権の期間をのぞいてずっと与党だったこの党はどういう政党なのか、実証的に研究します。7回目は、小選挙区時代に自民党、民主党が直面した新人議員教育について論じます。(論座編集部)
◇連載「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」はこちらからお読みいただけます。

自由民主党本部=東京都千代田区永田町、朝日新聞社ヘリから
候補者リクルートとジェンダー
「特に今、できたら女性専門の塾を作りたいです。それから、そもそも女性の受講者をもっと増やしていきたいと思っています。日本は、国会議員だけでなく、地方議員も含めて女性の比率が世界の中でもランキングとして非常に下位です。自民党が国民政党として、今後も幅広く各層の人たちを代弁するためには、もっと女性議員が増えることが必要だと思っています。
しかし、女性には様々なハンディキャップがあり、意欲はあっても、『地盤、看板、鞄』があるわけじゃない人が、いくら優秀であっても手を上げることができません。女性をできるだけリクルートしていきたいと思っていますので、その受け皿として女性政経塾というものを是非作りたいと思います。
自民党女性局の中でこれまで2回、特に意欲のある女性を中心に、『女性政治家養成塾』というものを始めました。そこで政経塾と同じように研修していますから、卒業した人を同時に都道府県連の政経塾に紹介するとか、中央政治大学院としてできるだけそういう人を応援して、もっと女性が手をあげやすいような状況を党としてバックアップしていきたいと思っています」
下村博文・自民党衆議院議員(中央政治大学院学院長)は、候補者リクルートのジェンダー平等について熱く語った(2022年5月16日インタビュー(筆者取材))。
実際、2022年7月の参議院選では、自民党の比例区候補に占める女性の割合が目標の3割を超えた(「自民、参院選に女性4候補決定 『比例で女性候補3割』の目標は達成」『朝日新聞』2022年5月30日、2022年6月14日閲覧)。
「連載・『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」ではこれから数回、候補者のリクルートを扱いたい。対象は、自民党、立憲民主党、公明党の3党である。本稿では、まず自民党を扱う。前半では、自民党と民主党の新人議員教育の比較、後半では現在の自民党の中央政治大学院について議論を展開していく。
派閥が若手議員の研修会を開催
自民党の議員教育はどう展開されているのか。派閥内の取組もあり、明らかでない部分も多い。しかし、自民党史を振り返ると、新人議員教育について共通点が見えてくる。それは、「新人議員の大量当選への対応」である。
筆者が調べた限りでは、1986年10月16日の読売記事に、その萌芽が確認できる(「自民 若手議員研修会ブーム 総裁選での“即戦力”を期待?」『読売新聞』1986年10月16日朝刊)。
自民党の各派が、最近、そろって若手の“研修”を開始した。政治、政策の「勉強会」と銘打って、すでに中曽根派が会合を重ねているほか、十五日には、田中派が初会合を開いたのに続いて、安倍派も開催を決め、ちょっとしたブームとなっている。先の衆参同日選挙で各派とも新人議員を大量に当選させたため、その“オリエンテーション”(政治活動に関する指導)が主な目的だが、総裁候補を抱える派閥には「早く一人立ちして、戦力になって欲しい」との期待もあるようだ。
背景を少し補足する。中曽根総理の「死んだふり解散」による衆参同日選挙(1986年7月6日)で、自民党は衆議院で公認候補だけで300人当選(追加公認含めると304人)という大勝をおさめた(石川真澄『戦後政治史[新版]』岩波書店、2004年、p.158)。前回の83年12月18日衆院選の250人(追加公認入れて259人)から大きく増えたため、どう面倒を見るかという問題点が生じる。そこで、若手議員を集めた「勉強会」が行われた。中曽根派ではパーティーの開き方など政治資金の集め方、公共事業の予算獲得法、陳情処理のノウハウなどがテーマになっている。
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