花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
西側諸国での「ウクライナ早期停戦論」の台頭に寄せて
英国は「パーティーゲート」、ドイツはウクライナ対応の不手際と、各国それぞれ個別事情を抱えるが、共通するのがインフレの昂進(こうしん)だ。米国の消費者物価指数は+8.6%、ユーロ圏も+8.1%と5月はいずれも高い値で推移する。
元々、コロナからの回復過程で供給制約が生じていたのに加え、ウクライナによる原料・食料価格の高騰が加わった。家計の負担増は著しく、不満が各所で噴出する。特に低所得層は、賃金上昇が物価上昇に追いつかず賃金が実質減となり生活が直撃される。政権幹部は、国民の悲鳴を無視するわけにいかない。
こういう中、西側主要国の中で岸田政権のみが奇妙な安定を保つ。支持率6割前後と高い水準を維持し、このままいけば参議院選挙も無事切り抜けそうだ。
年明けの頃、オミクロン株が猛威を振るい、岸田内閣の今後はオミクロン株次第と見る向きもあった。それから半年が経過、政権は難なくこの問題をクリアした。成功の要因は、オミクロン株の弱毒性だ。新規感染者は増えたものの、重症化する率は低く、従って医療機関の負担も思ったほどでなかった。仮に、オミクロン株がデルタ株のような強毒性ウイルスであれば、医療逼迫が生じ政権の屋台骨は大きく揺らいでいたに違いない。
引き続いて日本を襲ったロシアによるウクライナ侵攻の衝撃も、岸田首相は無難に乗り超えた。西側諸国との連帯を固め結束を維持した。5月に来訪したバイデン大統領との日米首脳会談も、拡大抑止力と同盟強化を確認し万全だった。オミクロンもウクライナも大きな失点がない。その意味で、岸田政権が何かプラスのことをしたというより、マイナスがなかったというべきかもしれない。
ところで、日本も
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