メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

高校をなくすな! 教育で「地域魅力化」をはかる北海道足寄町の起死回生

無料の公設民営塾を開設、バス代・下宿代補助、野球部充実、海外の無料ホームステイも

山本章子 琉球大学准教授

高校がなくなると過疎化が加速

 2019年に放送されたNHKの朝の連続ドラマ『なつぞら』の舞台となった十勝地方。その東北部に足寄町は位置する。1960年に人口2万人弱となったのをピークに、1995年には1万人を割り、2015年には7000人を切った。町の主産業である農業、畜産業、林業が低迷するにつれて、高齢化と後継者不足で離農者が増え、進学のタイミングや仕事がないなどの理由で若年者が町を離れていった。典型的な過疎化のパターンだ。

 足寄町では、過疎化で生徒数が減少し、地元唯一の公立高校である北海道立足寄高等学校の定員割れが常態化している。これもいま全国の過疎地で共通して起きていることだ。

 いわゆる「高校全入」時代になると、足寄高校に入学する生徒の学力のばらつきが大きくなり、十勝地方の進学校の優秀者と遜色ない学力を持つ生徒と、入試の点数がほぼ0点の生徒が一緒に授業を受けるようになった。

 その結果、学力の高い地元の生徒が他地域の高校に進学するようになっていく。足寄高校は入学者を最低41名確保できないと、北海道教育委員会の方針で1学年2学級を維持できなくなる。1クラスに減らされると、同じく教育委員会の方針で高校再編計画の検討対象となる。

 歌手の松山千春、国会議員の鈴木宗男などが卒業した足寄高校が統廃合でなくなれば、地元の子供たちは公共交通機関を使って他地域の高校に通学することになる。しかし、過疎地域で鉄道が廃止された足寄町では、バスしか通学手段がないため、バスで通えない高校に進学する子供は、親元を離れて下宿生活をするか、世帯ごと地元から離れることになるだろう。

 つまり、足寄高校の1学年2学級を維持できないと、高校が廃校になり、子育て世帯の足寄町流出が進み、過疎化に拍車がかかる未来が待っているのだ。

拡大足寄高校=北海道足寄郡足寄町(みんなの高校情報北海道HPから)

入学者減に直面した足寄高校

 2011年度に初めて、足寄高校の入学者は38人、つまり2学級を編成できない40人以下に落ち込む。当時の安久津勝彦町長は「これは大変なことになる」と思った。近隣の中札内村や同じ十勝地方の浦幌町の公立高校は、すでに募集停止となっている。明日は我が身だ。

 その年の足寄中学の卒業生は62人いたにもかかわらず、足寄高校の入学者数が41人を切ったのは、帯広地方の進学校である道立帯広柏葉高等学校に進学した8人をはじめ、他地域の「もっといい」高校や高専に進んだ生徒が多かったからだ。

 足寄町が最初にとった対策は、足寄高校に進学した生徒全員に入学一時金7万円を支給することだった。見学旅行の補助金3万円も支給し、高校も夏休みの合宿などを実施して生徒の学力向上に取り組んだ。しかし、2014年度に高校入学者は再び41人を切る。

 高校進学を考える中学生の家庭を対象にアンケートを実施したところ、足寄高校への要望として圧倒的に多かったのが「学力向上」だった。しかし、高校でできることはすでにやった上での現状である。何か特効薬はないのか……。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

山本章子

山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

山本章子の記事

もっと見る