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「自民・公明vs民主党系政党」の枠組みに変化? 熱を帯びない参院選で何が……

首相の政治意思が見えぬ自民、維新を注視する公明、野党のビジョンがぼやけた立憲……

御厨貴 松本朋子 曽我豪 小野太郎 鬼原民幸 久保田侑暉 吉田貴文

地域政党から全国政党へ。維新の課題と注目点

――各政党の現状報告をお聞きになって、御厨先生、松本先生、いかがですか。

拡大御厨貴さん

御厨 個人的に最も関心があるのが日本維新の会なので、まず維新について述べます。歴史をひもとくと、維新のような地域政党が目立ったのは、明治の自由民権の頃でした。それぞれの地域で治水などの実績をあげて、存在感を示していましたが、そうした地方政党を星亨がつなぎ、全国に通じる施策、例えば教育にかかわる政策を掲げて全国政党に脱皮させ、最終的に立憲政友会を結党しました。

 この例にならうと、維新もどこかの時点で、大阪での実績を全国で訴えるという路線から、日本全体を視野に入れた政策を掲げる路線に変える必要があると思います。ただ、これには、維新のおもしろさが失われるリスクもある。そこをどうするか。

松本 維新について、地域政党から全国化するという文脈に絡めて伺います。民主党政権が誕生するまでは、「地方・農村と都市」という対立図式を、与党も野党も使っていたように思います。自民が地方・農村、民主系が都市という図式です。維新の場合、東京から見た大阪という地域の政党から広げるのか、大阪という都市から出た政党として伸ばしていくのかは、どちらでしょうか。

 参院選が政治体制を変える端緒になる可能性があるとすれば、ここで興味深い論点が出てきます。都市の政党という特徴を維新が担うとすれば、都市政党という性格を持つ公明党との関係がどうなるか。連立を組んできた、自民党と公明党との関係にどんな影響を与えるのか。

 その場合、立憲民主党の立ち位置はどうなるのでしょうか。本来、民主党を源流とする政党は都市に強い政党ですが、自民党が地方・農村に強い政党というのが変わらないなか、その他の政党の立ち位置がどうなるか、気になるところです。

拡大松本朋子さん

国政を中心とした力関係がない維新

――維新について、いろいろと言及がありましたが、担当記者としてどうでしょうか。

久保田 地域政党である大阪維新の会と国政政党である日本維新の会の間には、ある種の緊張関係があります。代表、副代表が大阪の首長であるということに加え、大阪府議や大阪市議などの地方議員と国会議員がほぼ対等。日本維新の会の常任役員会に大阪府議団長や市議団長が入る、大阪維新の幹部は日本維新の会の幹部にもなるというように、党内に国政を中心とした力関係がありません。

 強く主張する政策にもズレがあります。大阪の維新がアピールするのは、教育無償化や水道料金の値下げなど、生活に直結する課題に関する実績。国政の日本維新の会は、大きな実績がないということもあり、差別化を図るために自民党よりもタカ派な主張も目立ちます。

 都市政党か地方・農村政党かでいえば明らかに都市政党。東京から見ると大阪は一地方都市かもしれませんが、関西において大阪は大都市ですから。昨秋の衆院選でも県都を含む1区を中心に候補者を立てています。都市部でこそ、票が取れると考えていて、今後も都市の無党派層向けの政策を打っていくと思います。

 国政では、岸田政権になって維新と結びつきが強かった「菅(義偉)・松井(一郎)ライン」がなくなったこともあり、最近は自民攻撃が強まっている印象ですが、選挙の現場では立憲民主党への攻撃が従前どおり強い。あくまで民主系が獲得していた都市票を奪う戦略なのだと思います。

拡大久保田侑暉さん

御厨 一言いいですか。維新は大阪の地方議員と国会議員がほぼ対等ということですが、これは公明党の初期に似ています。公明党は東京都議が一番えらかった。東京都が宗教法人を認定するので、都を重視したのです。次にえらいのが参院議員、衆院議員が最後。これは国政に進出した順ですね。

 そうした意識は公明党内ではずっと続いていて、内紛のタネになったこともありました。維新の場合、今のところは特段の問題は出てないし、辞任した元地方議員を今回も立候補させているケースが多いようですが、維新が今後、全国政党として伸びていこうと時に、衆院議員がトップの自民などの既成政党形になるのか、衆院議員が代表にならない脱既成政党を目ざすのかは、面白い視点かもしれません。

維新の動向を注目する公明党

――維新と公明党の間には、都市政党であるという以外にも共通点があるのですね。公明党はそんな維新をどう見ているのでしょうか。

小野 公明党が兵庫などの選挙区で勝つためには、支持母体・創価学会の票だけでなく、自民党支持層や無党派層の票も必要です。維新がそういった層に広く浸透すれば、好ましくない影響が出てくる可能性もあり、その動向を注視しています。維新の伸長が憲法9条などの改正議論を加速させるとの観測もあります。公明党にとっては難しい局面が続くかもしれません。

 公明党が強い都市部の支持者も、結党以来、その姿が少しずつ変わってきました。福祉政策はもとより、安全保障政策への関心が強くなっていると聞きます。これまで抑制的に語ってきた防衛力強化を今回の参院選では重点政策に位置付けましたが、立党の精神である「平和の党」としてどう振る舞うか、もがいている印象です。

拡大小野太郎さん

野党という存在がなくなる!?

――なるほど。その公明党を含む与党については、御厨先生、いかがでしょうか。

御厨 自民党、公明党は選挙を前に引き締めているということですが、効果があるのか、心もとないところがあります。物価高についての政府・与党の議論を見ていると、特段の新しい施策がでているわけではない。どこか暢気なところがあり、引き締めにならないのではないかという気がします。

 ただ、自民党以上に危機なのはやはり野党です。このままだと、野党という存在が、事実上なくなるという空前絶後の事態になりかねない。戦後、社会党が野党第1党であり続け、いろいろ言われながらも、憲法9条問題も含めて、自民党に対峙(たいじ)する政党として存在したことに、国民はどこか安心していた。それがなくなりつつある。

 通常国会では、野党が一体になって政権を揺さぶるどころか、野党内の対立ばかりが目に付きました。立憲民主党と「兄弟政党」ともいえる国民民主党は、野党同士で国会対策を話し合う場から離脱して与党に接近。日本維新の会も独自の行動をとる。参院選でも衆院選まで続けてきた「野党共闘」の枠組みを維持できず、共産党との共闘も自民党からの批判を受けて今回はなし。

 立憲民主党をはじめとする野党の最大の問題は、状況に対応するばかりで、自ら状況規定をしようとしない点です。コロナ対応にせよ、物価高にせよ、政権の失策は山ほどあります。特にコロナは、今でも論点だらけですが、「もう終わった」という空気になっている。岸田さんがそういう顔している。失敗は菅さんのせい。もう過去のこと。日本って怖いと思います。時間が経つと、みんな忘れちゃう。

 だから、与党はほっとけばいい。でも、野党は忘れさせてはいけない。問題の在りかをあぶり出して、与党を攻めて状況規定をしなければいけない。野党のそういう要諦を立憲民主党はつかんでいません。

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