松下秀雄(まつした・ひでお) 朝日新聞山口総局長・前「論座」編集長
1964年、大阪生まれ。89年、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸、与党、野党、外務省、財務省などを担当し、デスクや論説委員、編集委員を経て、2020年4月から言論サイト「論座」副編集長、10月から編集長。22年9月から山口総局長。女性や若者、様々なマイノリティーの政治参加や、憲法、憲法改正国民投票などに関心をもち、取材・執筆している。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
朝日カルチャーセンター千葉教室「緊急〝討論〟」から
参院選が6月22日に公示されます。野党はどう臨むべきなのか。立憲民主党と国民民主党の足並みの乱れや、自民党との接近もとりざたされる労働界の動きの実態、労組と政治のあるべき関係は。選挙の争点は何か……。山口二郎・法政大学教授と神津里季生・前連合会長が語り合いました。
(朝日カルチャーセンター千葉教室が5月29日に開催した「緊急〝討論〟『野党共闘の行方~連合に問う』」をもとに修正・再構成したものです。「論座」では6月20日以降に公開する参院選関連の記事を、選挙が終わるまでの間、どなたにでも無料でお読みいただけるようにいたします)
(論座編集部)
山口二郎
(やまぐち・じろう)
法政大学法学部教授(政治学)
1958年生まれ。東京大学法学部卒。北海道大学法学部教授を経て、法政大学法学部教授(政治学)。主な著書に『大蔵官僚支配の終焉』『政治改革』『ブレア時代のイギリス』『政権交代とは何だったのか』『若者のための政治マニュアル』など。
神津里季生
(こうづ・りきお)
日本労働組合総連合会(連合)・前会長
1956年生まれ。東京大学教養学部卒。新日本製鐵労働組合連合会会長、日本基幹産業労働組合連合会中央執行委員長、連合事務局長などを経て2015年10月から21年10月まで連合会長。著書に『神津式 労働問題のレッスン』。
山口)野党の現状をどうご覧になっていますか。
神津)連合の立場からいうと、立憲民主党と国民民主党にはしっかり力を合わせてもらわないと話にならないというのが率直なところです。いまの芳野友子会長も一貫して、2つの党が力をあわせてくれと言い続けています。
2年前に、私も含めた3者で話し、2つの党が合流をするという話になった。でも、国民民主党の玉木雄一郎代表が、合流は是とするけれど私はいかないとおっしゃって、新しい立憲民主党と新しい国民民主党ができました。
2つにわかれていると、特色をださなければならないというのが常につきまとう。国民民主党は2022年度当初予算案に賛成しました。その判断自体をこのタイミングで云々することは控えますが、両党の間の溝が深まったことだけは歴然としています。非常に不幸な状態にあるといわざるをえません。
山口)まったく同感です。考え方が近くても、別の政党になると組織の論理が優先し、違うことをいいたがるし、批判がめだつようになる。情けない思いをしています。
神津)もともとは同じ民主党だった2つの党がたたきあっている印象があれば、有権者は引いてしまう。力をあわせてほしいですね。
山口)ひとつの難問として原発政策をめぐる立場の違いがあります。でも、エネルギー転換はしなければならないし、脱炭素社会の実現は非常に重要な課題だけれども、長期的に考えて原発依存から脱却することでまとまることはできる。私は「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」で野党の共通政策をつくるときも、みんなが賛成できる政策で折り合いをつけたつもりなんですけれどね。
神津)不毛な対立はもうやめるべきです。原子力エネルギーに依存したままでいるのは国内世論も含めて難しい。一方で一挙に全部やめることはできない。連合としては、原子力エネルギーからは将来的に脱却していく。だけど、現時点で安全が確認された原子力発電所は再稼働すべきだといっています。
一方で、新しい立憲民主党の綱領に「原発ゼロ」という表現が入った。綱領の作成はトップシークレットというか、幹部同士でやっていて、ふたをあけるとそうなっていた。ぼくは枝野幸男代表に、「原発ゼロ」という文言をみだりに振りかざすということではないとメッセージを出してくれと求め、出してくれた。だけど、最後まで議員のみなさんの合流への忌避感は消えなかった。
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