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政党は選挙候補者をどうリクルートしているのか?~自民党都連と立憲民主党の場合

「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【8】

岡野裕元 一般財団法人行政管理研究センター研究員

授業は「顔が見える」人数で

 都連政経塾では、受講料(一般リーダーコースは5万円、専門政治コースは10万円)を要する(TOKYO自民党政経塾HP「募集要項」2022年5月23日閲覧)。政経塾の受講料は、自民党都連にとって貴重な収入源でもある。都連の政治資金収支報告書(令和2年分)を調べると、1020万円(備考欄に「R2.5.28 116人」の記載)の収入がある。定員以上の塾生を受け入れているが、それでも「お断りするのが容易でない」くらいの応募者数がある(同事務総長)。人数を絞っている理由は、「face to face で授業を進めていくため」である(同事務総長)。

 会場の事情もある。都連は党本部の建物に同居しており、党本部の部屋の収容人数の制約がある。都連政経塾の開設当初から、定員以上の応募者が集まった。

 塾生のバックグラウンドは様々だ。公務員、地方議員、メディア関係者、民間企業の勤労者などもいるという。このような事情もあるため、「塾生のプライバシーを尊重しながら進めています」という(同事務総長)。開講時間帯を夜に設定しているのも、塾生にあわせているためだ。

拡大自民党本部=東京都千代田区

公募制度で生じた課題を解決するために

 濱本真輔(大阪大学准教授)は、自民党の公募制度の経緯を次のように説明する(濱本真輔『日本の国会議員』中央公論新社、2022年、pp.16-17)。

 自民党は一九九〇年代から一部の地域で公募を実施していたが、党全体の仕組みとしては定着していなかった。しかし、得票の伸び悩みや選挙の敗北を受けて、公募は二〇〇三年以降に広がり、〇九年に政権から下野してからは政党本部が原則として公募の実施を求めるなど、その活用が広がった。

 二〇〇〇年から一三年までをみると、公募による新人は少なくとも一五八名にのぼり、全新人候補の四八%を占める。公募の実施数、新人候補に占める割合も高くなり、二〇一〇年以降は七割の選挙区で実施されている。

 この2010年は、自民党が野党転落後、初めて臨む参院選があった年である。参院選直後、次のような自民党内での選挙分析が朝日記事で紹介されている(「自民、『敵失』追い風 谷垣氏続投、反転攻勢へ 参院選、民主の改選議席上回る」『朝日新聞』2010年7月12日朝刊)。

 自民が各選挙区で擁立した候補についても、公募制の導入で若返りを図った。自民が善戦した1人区で、新顔が立候補したのは2007年参院選の倍近い16選挙区。このうち12選挙区は、民主公認・推薦候補より若かった。

 選対幹部は「自民、民主の2大政党の違いがはっきりしなくなっているため、『若いか高齢か』『男性か女性か』といったイメージが勝敗を左右している」とみる。

 別の参院議員は「今回、苦戦していたのは代わり映えのしない現職候補。それにひきかえ、公募で選ばれた若手候補は大きく伸びた」と総括した。

 都連政経塾開設の背景は、党本部が候補者擁立で公募制を導入したことがきっかけであった。当時、「自民党の歴史を知らない、自民党の地方組織を理解していない者への対応」が課題であった(同事務総長)。都連政経塾の受講は、自民党の公認決定後の新人候補者に必修とされ、都連規約にも規定された。

 政経塾の目的は、「政治家を育てる」というよりも、「将来日本をリードする人たちの人間教育をすすめていく」という点が第一であったという(同事務総長)。「人間教育をするなかで、できれば自民党の政策を理解していただければありがたいな、という一面もあります。将来、政治家を目指す人もいますし、企業の中でリーダーになりたいという方もおりますので、リーダーシップをとるための覚悟をこの塾を通じて養成していただければ、という希望は持っています」と語る(同事務総長)。

 都連政経塾の開設する前、愛知県と神奈川県が先行して開設しており、両県連を参照しながら開設準備を行った。政党の地方組織同士が相互参照を行う点は興味深い。当時の都連には、情報過多の時代に対応できるための塾を作りたい意図もあった。都連事務総長は、背景をこう語る。

 かつての政治家は、地方議員も含めていわゆる名誉職みたいなところもあり、地域の人たちの声をその地域に反映させていくという議員が多かったです。ところが、時代が変わり、情報が多くなると、どの情報を選択するのか、何の情報が正しいのか正しくないのか、そういったことの専門的な知識が必要になってきました。きちんと整理整頓しないと、将来日本の政治を携わっていく政治家の皆さんが困ってしまわないのか。

 候補者公募と候補者予備群の教育は、セットで考えるべきなのである。

党のガバナンスコードを策定

 2022年5月31日、自民党の総務会で党の運営の指針となる「ガバナンスコード」が了承された(自由民主党HP「自民党ガバナンスコードが決定」2022年5月31日、2022年6月22日閲覧)。教育の重視はここにもあらわれている。

 このガバナンスコードを点検すると、5原則・25項目のうち、4項目(「原則1-4 豊富な研鑽・人材育成機会の提供」、「原則2-4 立候補予定者等の発掘、育成システムの強化」、「原則2-5 党及び議員事務所の職員等への教育、研修及び育成」、「原則5-4 コンプライアンス研修の受講徹底」)のなかで「研修」という言葉が使用されている(党改革実行本部「自由民主党ガバナンスコード」2022年5月31日、2022年6月22日閲覧)。

講義のテーマの選定は

 都連政経塾の第1期からの具体的な講義テーマを調べると(TOKYO自民党政経塾HP「講師実績」2022年5月23日閲覧)、筆者の視点では次のように分類できると考えられる。

①自民党らしい保守色豊かなもの(「憲法問題」、「憲法改正」、「武士道精神」、「日本の神話」、「愛国心」など)
②政権関係(「新型コロナウイルスと岸田内閣」、「菅政権の課題」、「安倍政権が進める日本の国づくり」など)
③個別政策課題、時事問題(「日本のデジタル改革」、「外国人労働者受け入れにあたっての課題」など)
④外交・安全保障(「最近の動きと中国問題」、「一帯一路と中国共産党」、「日本と近隣諸国」など)
⑤政治・選挙活動(「スピーチと伝え方」、「政治家とリーダー像」など)
⑥心構え(「志を立てる」、「学びのサイクル」、「ビジョン実現の方法」など)

 講座数は多く、講義テーマも多岐にわたっており、上記いずれかの特定分野に特別大きく偏っていることはない。講義テーマの選定で、「ある程度、講師を決めてはいきますが、何をテーマにするかについては、その時々に塾生の希望を聞きます。タイムリーな話題にあわせた時事問題、政策課題について学びたいといった希望に沿って、講師を選考していきます。講座と講座の間で、事務局に申し出るよう希望を聞きます」ということを心がけている(同事務総長)。運営の柔軟性も持ち合わせている。

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筆者

岡野裕元

岡野裕元(おかの・ひろもと) 一般財団法人行政管理研究センター研究員

1989年千葉県佐倉市出身。学習院大学法学部卒業。学習院大学大学院政治学研究科政治学専攻博士後期課程修了、博士(政治学)。現在、一般財団法人行政管理研究センター研究員のほか、報道番組の司会者の政治アドバイザーも務める。元青山学院大学文学部・学習院大学法学部非常勤講師。専門は、地方政治、政治学。著書に、『都道府県議会選挙の研究』(成文堂)、『官邸主導と自民党政治――小泉政権の史的検証』(共著、吉田書店)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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