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政党は選挙候補者をどうリクルートしているのか?~自民党都連と立憲民主党の場合

「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【8】

岡野裕元 一般財団法人行政管理研究センター研究員

「地の利」をいかした豊富な講師陣

 都連政経塾運営の柔軟性の秘訣は、どこからもたらされるのか。そもそも地方政治学校は、テーマごとにふさわしい講師の派遣依頼を中央政治大学院へ出す。自民党本部に同居する都連の場合、東京という「地の利」があり、講師となる国会議員や専門家は身近な存在だ。大臣、党三役のスケジュールも組みやすい。

 実際、一般リーダーコースでは塾長、塾長代行が講師を務め、専門政治コースでは現職の国会議員を中心に多彩なメンバーがそろう。例えば、2021年度は、西村康稔・経済再生担当大臣、岸信夫・防衛大臣、河野太郎・行政改革担当大臣、高市早苗・党政務調査会長、菅義偉・前内閣総理大臣などだ。

 講義の実態はどうなっているのか。ただの“講演会の聴衆”になってしまってはいないか。実は、都連政経塾では、入塾しても“ところてん式”に卒業できるわけではない。「受講料をいただいているわけですから、いいかげんなことはできません」(同事務総長)。卒業できない理由も、「無断欠席であったり、論文を出さなかったり。出席率もあります」ということだった(同事務総長)。政経塾当日は都連職員も1日がかりで準備を行う力の入れようだ。

無党派層にも門戸を広く

 受講生は首都圏からが中心だが、遠方からの者(例、北海道、沖縄県)も過去にいた。入塾希望者が都連に殺到する背景は、多彩な講師陣と関係があるかもしれない。また、入塾資格の一つに、「自民党の政策を理解し、応援したい方。政治に関心のある方」という項目があるが、他党の党籍さえなければ問題ないため、いわゆる無党派層も集めることが可能だ。入塾要件のハードルの低さも、人気と関係していると考えられる。

 塾生に無党派層が集まりやすい環境であることは、反面、離れやすいことも意味する。実際、自民党でなく他党から出馬した者もいる。とはいえ、仮に他党へ候補者が流出したとしても、多数の良い「タマ」を公募での潜在的候補としてキープしておけるのであれば、自民党にとってメリットの方が上回る。

 2022年6月16日、政府の衆院議員選挙区画定審議会は、10増10減を勧告した(「衆院140選挙区、区割り変更 10増10減を勧告 過去最多」『朝日新聞』2022年6月17日、2022年6月22日閲覧)。この勧告どおりに区割り変更を実施するのであれば、東京都は25区から30区へと5も増加する。周辺3県も、埼玉県(15→16)、千葉県(13→14)、神奈川県(18→20)となる。289の小選挙区のうち、約3割が1都3県で占める計算だ。そのため、今後より一層、都連政経塾に候補者予備群が集まりやすい状況が強まると予測される。

拡大w_p_o/shutterstock.com

政党と社会とのリンケージ

 政治学の議論に転じると、自民党が保守色を増した背景は、自民党自体が、または日本社会全体の座標軸自体が右傾化したといった指摘がこれまであった(詳しくは、中北浩爾『自民党政治の変容』NHK出版、2014年、中野晃一『右傾化する日本政治』岩波書店、2015年などを参照のこと)。

 社会と政党がリンケージし、共鳴するための手段は、様々考えられる。組織政党でない自民党が、社会一般からの候補者公募と、党による候補者予備群の教育をセットで行ったことも、その一つとして説明できるのではないだろうか。

 さらに、都連政経塾の例では、国政、地方政治といった政治領域の区分を行っていない。そうすると、同一の候補者予備群の中から、国政、地方へとマルチレベルに人材供給される。自民党が国政、地方の両領域で保守色を増した背景は、社会と党自身の間での相互作用(公募・候補者予備群教育がセットで媒介)も念頭に置く必要があるだろう。

ジェンダー平等を全面に掲げる立憲民主党

 他方、立憲民主党の候補者リクルートの実態は、どのようになっているのか。

 「自民党に代わる選択肢は必ず政治に必要です。自分たちがしっかり示すのだということを腹に据え、目先の支持率で右往左往せずにやっていく覚悟が必要です」。立憲民主党の大西健介・選挙対策委員長は、こう意気込みを語る(2022年5月10日インタビュー(筆者取材)。以下同じ)。

 野党第1党の立憲民主党の大きな特徴は、ジェンダー平等を全面に掲げる点である。自民党内でもジェンダー平等の志向はあるが、選択的夫婦別姓制度に典型的に見られるように、党内では議論が紛糾してきた。

 立憲民主党がジェンダー平等に積極的に向き合う背景は、枝野幸男代表時代の旧立憲民主党(2017年~2020年)の経路依存性も無視できない。旧立憲民主党は、党綱領で、「私たちは、あらゆる差別に対して断固として闘います。性別を問わずその個性と能力を十分に発揮することができるジェンダー平等を確立するとともに、性的指向や性自認、障がいの有無などによって差別されない社会を推進します。」と明記していた(立憲民主党HP「立憲民主党綱領」、2022年6月22日閲覧)。

 現在の立憲民主党(泉健太代表、旧国民民主党出身)の執行役員会も、12人のうち6人が女性である。泉代表は、2021年11月の代表選で「ジェンダー平等について、『執行役員の男女比率を同率にし、発想を転換していきたい。多くの皆さまを活かすことができる、新しい時代のリーダーとして、立憲民主党を引っ張っていく』と意気込みを語り」、勝ち抜いた(立憲民主党HP「【代表選挙共同記者会見】逢坂誠二、小川淳也、泉健太、西村ちなみの4候補が決意表明」2021年11月19日、2022年5月12日閲覧)。大西選対委員長は、次のように語る。

 幹事長という要職が西村智奈美議員、執行役員会メンバーの半数が女性という点は、女性候補者擁立の面で影響が大きいと思います。

 2022年7月の参議院選挙では、女性候補者過半数を擁立する目標を掲げています。女性候補者擁立を積極的にはかっており、今回の参院選に向けて女性候補者サポートチームも新たに立ち上げました。サポートチームは、女性候補者特有の様々な悩み、例えば、子育てしながらの政治活動、票ハラスメントなどの相談にのるとともに、研修も行っています。党職員もサポートしますが、職員数が限られているため、現職の女性国会議員等がメンターという形で様々な相談にのります。

 研修の内容は、ジェンダーの話や、街頭演説の見せ方など、オンラインと対面の両形式で行っています。現職国会議員(例、岡本章子議員、金子恵美議員など)や外部団体が講師を務めます。

 ちなみに、女性が立候補しやすい環境を整備することは、政党に限られるものではない。2022年6月21日、福岡県議会は、都道府県議会で初めて、議員へのハラスメント防止のための条例案を可決・成立させた(「議員へのハラスメント防止条例成立 福岡県議会 『票ハラ』も対象に」『朝日新聞』2022年6月22日、2022年6月22日閲覧)。

 「条例によると、議会内外でのセクハラやパワハラ、投票の見返りにさまざまな要求をする『票ハラ』などがあった場合、委嘱された弁護士などの専門家が相談を受け事案を調査。必要な場合は議長が防止措置を講じる。やむを得ない場合は個人情報を伏せ、相談内容や調査結果を公表することができると規定した」(「『票ハラ』防止へ、福岡県議会が条例可決 都道府県議会で初」『毎日新聞』2022年6月21日、2022年6月22日閲覧)。議会レベルでもこうした動きを加速するべきだ。

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筆者

岡野裕元

岡野裕元(おかの・ひろもと) 一般財団法人行政管理研究センター研究員

1989年千葉県佐倉市出身。学習院大学法学部卒業。学習院大学大学院政治学研究科政治学専攻博士後期課程修了、博士(政治学)。現在、一般財団法人行政管理研究センター研究員のほか、報道番組の司会者の政治アドバイザーも務める。元青山学院大学文学部・学習院大学法学部非常勤講師。専門は、地方政治、政治学。著書に、『都道府県議会選挙の研究』(成文堂)、『官邸主導と自民党政治――小泉政権の史的検証』(共著、吉田書店)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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