松下秀雄(まつした・ひでお) 「論座」編集長
1964年、大阪生まれ。89年、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸、与党、野党、外務省、財務省などを担当し、デスクや論説委員、編集委員を経て、2020年4月から言論サイト「論座」副編集長、10月から編集長。女性や若者、様々なマイノリティーの政治参加や、憲法、憲法改正国民投票などに関心をもち、取材・執筆している。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「みんなの未来を選ぶためのチェックリスト」から考えたこと
町田さんはジェンダー平等に強い関心をもつ。ところが、初めて「チェックリスト」にとりくんだ昨年の衆院選のあと、SNS上で「ジェンダーは後回しだ。経済や外交のほうが優先順位が高い」といった言葉が飛び交うのをみたという。
これも、問題が「見えていない」一例だろう。ジェンダーは人の生き方、社会のあり方を規定していて、経済とも切り離せない。でも、その重さがなかなか伝わらない。
私自身、ジェンダーの問題が「見えていない」ひとりだ。だから、本で読んだことをなぞるくらいしかできないが、ジェンダーとは「男性はこうあるべきだ」「女性はこうするものだ」といった、社会的・文化的にかたちづくられた性差を指す。それは「規範」や「常識」になっているだけに、その問題点に気づきにくい。
たとえば、夫が稼ぎ、妻は家族の世話をするのがかつての「常識」だった。妻が働いても、その収入は「家計の足し」。そんなふうに思っていれば、女性が低賃金で不安定な働き方をしていても問題だと理解されにくい。「非正規雇用」の問題点がしきりに叫ばれるようになったのは、そうした働き方が男性に広がってからだ。
それは深刻な結果をもたらしている。シングルマザーや、夫に先立たれた高齢の女性のように、男性の稼ぎに頼れない数多くの女性が貧困に陥っている。
「チェックリスト」のジェンダー平等の項目では、選択的夫婦別姓導入と、各党の候補に占める女性の割合の数値目標を公表することを義務化するかという2問を聞いている。
けれど、いま述べたような文脈で読めば、ほかの項目にもジェンダーにかかわる質問が並んでいることに気づく。
たとえば「介護士や保育士の給与のさらなる引き上げを含めた待遇改善を行いますか?」という質問だ。
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