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公明党の候補者リクルート事情と選挙戦略の現在~創価学会の支援の決め方は

「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【9】

岡野裕元 一般財団法人行政管理研究センター研究員

公明党の「ジェンダー平等」の実態

 近年の政治の大きな流れに「ジェンダー平等」がある。「政治分野における男女共同参画推進法」(2018年5月23日公布・施行)はその象徴だ。その後も動きは続き、第7回「自民党・民主党は新人議員をどう教育してきたのか?~中央政治大学院の役割は」と第8回「政党は選挙候補者をどうリクルートしているのか?~自民党都連と立憲民主党の場合」で触れたように、自民、立憲とも女性候補者を増やす努力を試みている。日本共産党も、第28回党大会の第一決議(政治任務)(2020年1月18日)で、女性候補者比率を高める方針を採択している。

 公明党はジェンダー平等についてどのように考えているのか。高木選対委員長によると、以下のような状況となっている。

 現在、公明党内では、国政、地方議会選挙とも、女性候補者数を増やすための特別な取決めはありません。もちろん、男女共同参画、ジェンダー平等という観点というのは、極めて重要なテーマであると認識しています。これは結果的にという話なのですけれども、国会議員、地方議員合わせて2955人(2022年5月31日現在)おりまして、そのうち女性議員が940人(31.81%)(2022年5月31日現在)います。これをもっと増やしていこうという意識は持っています。

 ただし、党内の役職の側面から見ると、各都道府県本部の代表については今現在、女性がいません。事情として考えられるのは、国会議員、県会議員の女性の割合が少ないことです。我が党だけではないと思うのですが、国会、都道府県会へ積極的に女性を擁立していく流れは必要であると認識しています。

  高木選対委員長自身、肌感覚で次のように感じるようなこともあるという。

 うちの党の場合、議員が各支部の総支部長を兼ねるケースが多い。様々な課題解決にあたり、地方議会では自民党と組んで与党になっている場面も多々あるなか、自民党との交渉役、また与党として、業界・団体と接触をし、意見を聞き、交渉する場など、案件が男性社会ではないかという気もします。

 政治学の議論に目を移すと、どうやら各地域や組織、団体に存在する規範意識(組織の規範)に課題がありそうだ。例えば、前田健太郎(東京大学准教授)は、次のようにわかりやすく紹介する(前田健太郎『女性のいない民主主義』岩波書店、2019年、pp.17-18)。

 いかなる組織であれ、その構成員には、一定の役割が期待される。その規範は、次のように定式化される。
・この組織の構成員は、Xでなければならない。
通常、このXの内容は、性別によって定義されているわけではない。そこには、「冷静沈着」「質実剛健」「競争的」「積極的」「野心的」などといった単語が入る。

 だが、ここでXに含まれる資質は、多くの場合、「男らしい」と言われる性質と重なっている。

 そう考えると、日本政治のジェンダー平等の問題は、生活者(=有権者)レベルに身近な組織、団体(例えば、会社、役所、町内会、労働組合、宗教団体など)まで根を下ろす深い問題であるとわかる。

 本来、女性も議員である以上、人数のみでなく、質もセットで問われるべきだ。社会一般に議論されているのは、数の面を中心に先行しているように思われる。その一方で、公明党は女性議員の質にも力を入れている。公明党の女性委員会については、拙稿(岡野裕元「公明党の立体的政策形成――「ヨコ」関係の軸となる国会議員・地方議員・事務局との協働ネットワーク――」奥健太郎・黒澤良[編著]『官邸主導と自民党政治――小泉政権の史的検証』吉田書店、2022年、pp.456-458)でも紹介しているので、別途閲覧していただきたい。

拡大参院選対策本部の看板を掲げる公明党の山口那津男代表(右から4人目)ら幹部=2021年12月18日、東京都新宿区

世代交代の功罪

 候補者リクルート(ジェンダーの観点も含め)が“入口”の部分だとすれば、議員引退は“出口”である。公明党内では、議員の定年制がある。党内の世代交代が常に一定のスピードで進展することは、議員の年齢層の偏り防止や人材の流動化の機能も果たしていると考えられる。高木選対委員長も、次の認識を示す。

 公明党の議員定年制は、国会議員、地方議員ともにあります(現役で69歳を超えない)。地方議員は任期4年ですから、64歳だと公認されます。国会議員についても、衆議院は解散がありますので、これに準じる形でやっています。ですので、国会でも地方議会でも世代交代が上手くはかられているのは、そのとおりであると思いますし、必要なことです。「出たい人」より「出したい人」という意味では、次から次へと新しい血が入り、新陳代謝が図られることは組織にとって大切なことだと思います。

 一方で、引退した議員も公明党の一員であることには変わりありません。一般市民に戻ったとしても、議員のOB・OGとして現職のメンバー・後輩たちとしっかり連携をとりながら、様々な角度から応援します。まさに「大衆の中に死んでいく」と。実際、国会議員を引退された方々には、常任顧問、顧問、アドバイザーという肩書を持ってもらい、しっかりとバックアップしてもらっています。

 また、同一の選挙区で議員交代が生じる場合、きちんと引継ぎも行っています。有権者側からしてみれば、「この人じゃなきゃだめだ」という思いがあっても、引退議員と新しい候補者との間できちんと引き継がれているので、安心感を与えるというのがあります。

 そのほか、世代交代のメリットとして考えられるのは、第3回「融合する公明党の国会議員と地方議員~党運営のDX化が支える議員活動」で紹介したような、党内でのデジタル化、DX化の取組である。この動きは、他党よりも公明党が早い。職員組織も含め、人材の世代交代がきちんと定期的に行われているのが大きい。

 議員であれ職員であれ、党内で特定の年齢層の塊が一気に組織から離れることには、それまで培った集団知識・経験が失われるリスクもある。集団知識を構成するのは、ベースとして個々人の知識・経験だからである。

自公間のパイプは弱まったのか

 世代継承で考えさせられるのは、2021年の総選挙以降、「自公のパイプの弱まり」という論説や記事をよく目にするようになった点である(例えば、「自公政権に すきま風?~細るパイプの先は~」NHK政治マガジン、2022年2月16日、2022年6月24日閲覧)。自民党とのパイプの強さと言えば、当時の太田昭宏議員、漆原良夫議員など、国対経験者が知られていた。「自公のパイプの弱まり」という点は公明党の内部から見てどうなのか。自身が国対委員長の経験もある高木選対委員長は、次のように語る。

 私自身は、マスコミが言っているほどのことではないと思います。たしかに、太田昭宏さんや漆原良夫さんのように、自民党と一緒にやっているな、と見える方が引退されると、「自民党と誰がやっているの」となります。しかし、今の執行部だけではなく、20年以上の自民党との連立のなかで、チームで様々なチャンネルがあります。自民党側も定期的に人事交代しますから、公明党と親しい方、これから親しくなる方がいるのもたしかです。なので、何も公明党だけの話ではないんです。

 私も、選対委員長、国対委員長をやって、また選対委員長に戻ってきていますので、自民党の方々と様々なチャンネルがあります。それぞれの部門部門で長い付き合いがありますし、そのポストについたことでこれから付き合いが深まっていくという方もいますから、「パイプの細い太い」を言ってもしかたがないと思います。

 今目の前の話、これからの中長期の話、それぞれについてしっかりと協議する。生まれも育ちも違う政党ですから、お互いにお互いを認めた上で、それぞれが主張し、譲るものは譲るというのが、今まで自公が続いてきたコツ、肝じゃないかと思います。

 現在の国会情勢は「一強多弱」で落ち着いているが、平成期には、自民党、民主党系の政党といった議員政党で、新人議員の大量当選と落選が繰り返された。情勢次第で選挙ごとの議員の入れ替えがあまりに激しくなると、新人議員が継続して当選できず、やがて中堅議員層も必然的に薄くなっていく。この点も政党間の人脈面で考える必要がある。

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筆者

岡野裕元

岡野裕元(おかの・ひろもと) 一般財団法人行政管理研究センター研究員

1989年千葉県佐倉市出身。学習院大学法学部卒業。学習院大学大学院政治学研究科政治学専攻博士後期課程修了、博士(政治学)。現在、一般財団法人行政管理研究センター研究員のほか、報道番組の司会者の政治アドバイザーも務める。元青山学院大学文学部・学習院大学法学部非常勤講師。専門は、地方政治、政治学。著書に、『都道府県議会選挙の研究』(成文堂)、『官邸主導と自民党政治――小泉政権の史的検証』(共著、吉田書店)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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