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新型コロナPCR検査をめぐり「非常識」が横行した日本~上昌広氏に聞く

コロナ対策徹底批判【第五部】~上昌広・医療ガバナンス研究所理事長インタビュー⑱

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

 新型コロナウイルスの感染が再び拡大している。これまで2年半の間に6回の「波」を経験しながら、コロナ患者の受け入れの態勢がいまだ不十分であるなど、課題は積み残されたままだ。この国は一体、どうなっているのか。

 思えば、2020年3月末から4月初めにかけてコロナウイルスに感染した私は、発熱に苦しみながら11日間PCR検査を受けられず、自宅の部屋で寝て過ごした。何回か保健所に電話をかけ検査を強く懇請したが、最後は「いくら言っても無駄ですよ」という返事しか返ってこなかった。その経緯については当時、「論座」に詳しく書いた。

 この頃、私と同じようにPCR検査を受けられず、自宅で横になったまま病状を悪化させていく人々が相次いだ。タレントの岡江久美子さんは同じころ、検査の前に容体を悪化させて亡くなった。

 コロナウイルスが日本に入ってきた2020年、保健所はなぜかPCR検査を抑制しまくった。その動機や背景は何だったのか。臨床医でありながら世界の医療最前線を取材し続ける医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏に聞くと、驚くべき真実が浮かび上がった――。上氏へのインタビューによるコロナ対策徹底批判【第五部】では、保健所と医系技官の問題を中心に話を聞いていく。

拡大上昌弘・医療ガバナンス研究所理事長

コロナ対策上もっとも重要なPCR検査

――保健所と言えば、コロナウイルスが日本に入ってきた最初の年、PCR検査をなかなか受けさせてくれないことが大きな問題になりました。そこでまず、検査そのものについておうかがいします。「感染症対策の基本は検査と治療・隔離」と上さんから何度もうかがったのですが、その点から言ってPCR検査はコロナ対策上もっとも重要なものですね。

上昌広 その通りです。臨床医学は診断が基本です。診断して治療する、診断して隔離する。これが基本です。もちろんグレーゾーンの問題など診断できないものもありますが、コロナウイルスに関しては明確な診断ができる。健常人にコロナウイルスは存在しないので、体内から検出されれば感染してるって言えるんです。

 普通、培養検査をして「陽性」となれば感染と判断するのですが、ウイルスというのは培養が極めて難しい。そこでPCR検査をやって、コロナのように健常者の体内や環境中にいない病原体の場合は、一部でも遺伝子配列があれば感染しているとみなすわけです。

 PCR検査は英語のPolymerase Chain Reactionの頭文字を取ったもの。日本語ではポリメラーゼ連鎖反応という。DNAポリメラーゼという酵素の働きを利用してコロナ遺伝子を数十億倍に増やしてウイルスを検出する。具体的には、コロナウイルスが存在する鼻や咽喉、唾液から検体を採取し、専用の薬品と混ぜ合わせてPCR検査機にかけ、加熱と冷却を繰り返してウイルス遺伝子を増幅させていく。増幅させた遺伝子配列を見て、コロナウイルスが存在するかどうかチェックする。

 基本的なことを言えば、コロナウイルスは環境中には存在しないし、人間の体内にもコロナに似たウイルスはいない。だから、検体の中にそれがいればコロナに感染していると定義できます。

 コロナウイルスが環境中にいるかいないか、あるいは体内に似たものがいるかいないかという問題は、「条件検討」と呼ばれます。そして、この条件検討の作業をきっちりやれば、「PCR検査陽性イコール感染」になるわけです。

拡大国立感染症研究所で分離に成功した新型コロナウイルスのオミクロン株の電子顕微鏡写真=国立感染症研究所提供

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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