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食べログ賠償3840万円が問う ネット社会との向き合い方

アルゴリズムから離れ、自分の目と舌で判断するために

花田吉隆 元防衛大学校教授

アルゴリズムのブラックボックス化と独禁法

 今回の問題は、アルゴリズムの変更に、チェーン店側に対し意図的に損害を生じさせるような不公正があったのではないか、ということだ。アルゴリズムはオープンにされていない。これをオープンにすれば、店側がそれを参考にして行動し正しい評価が得られなくなる、とカカクコムは主張する。その結果、アルゴリズムはブラックボックス化し、何やら訳が分からないまま店の評価が上がったり下がったりする。店側は、そこに不公正があるのではないか、と主張した。

 店側によれば、評価が0.1下がれば損害額は月100万円にも上る。それが、本件の場合、ある日突然平均0.2下がった。しかも一つの店舗だけでなく、チェーン店が軒並み下げられた。全部で21店舗もあれば営業損失は膨大だ。店側は、そこに意図的な不公正があったのではないかとし、提訴した。裁判所はその主張を認めた。

 裁判所がそこで持ち出したのが独占禁止法だ。カカクコムには巨大な市場支配力がある。それを用いて評価を操作すれば、同法が禁じる「優越的地位の乱用」にあたる。

 その前提として、そもそも独占禁止法が規制対象とするのは「取引」だが、評価は取引か、更に、カカクコムは果たして優越的地位にあるのか、が判断されねばならない。

 「取引」については、通常、取引とは金銭のやり取りを伴うものを指すが、本件はカネのやり取りを伴わない利用者による評価だ。では、独占禁止法の対象外か。裁判所から意見を求められた公正取引委員会は、これも「取引」に当たると回答した。委員会側からすれば、これを取引でないとしたのでは、ネット上の無料で提供されるサービスがことごとく同法のアミから外れてしまう。それでは同法の意味が失われてしまう、と考えた。

 「優越的地位」については、上記の通り裁判所はこれを認定したが、常識的に見て、膨大な額の売り上げを左右するカカクコムが優越的地位にあたらないとの判断はありえない。

 裁判所は、以上を前提に、カカクコムのとった措置を「優越的地位の乱用」と判断し、これに賠償を命じた。裁判所の判断は、ネット時代に急速に市場支配力を持つようになったカカクコムのような事業者を、法は野放しにしないとした点で重要だ。

それはそれとし、この問題の意味はもっと別のところにあるのではないか。

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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