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「安倍改憲」の重しが外れ、漂う改憲ムード

ウクライナ侵攻のさなかの参院選に、私たちはどう向き合うべきか

国分高史 ジャーナリスト・元朝日新聞編集委員兼論説委員

「安倍1強」下と異なる政治状況、衆院憲法審開催は過去最多に

 安倍1強体制のもとで迎えた2016年と19年の参院選では、いわゆる「改憲勢力」が議席数の3分の2を超えるかどうかが注目された。16年は安倍氏の思惑通り3分の2を超えたが、19年はわずかに割り込んだ。それから3年たった今年の参院選では、過去2回とは憲法改正をめぐる政治状況に大きな違いがある。それが端的に表れたのが、選挙前の通常国会での衆院憲法審査会の動きだ。

 憲法や関連法制について調査し、憲法改正原案を審議する権限をもつ国会の常設機関が衆参両院の憲法審査会だ。このうち、各党で憲法に詳しい幹部が幹事や委員として出席する衆院憲法審査会が、先の通常国会では昨年までとは様変わりした。

 昨年までは、政府の新年度予算案が衆院を通過した後にその国会での最初の会議が開かれるのが通例だった。だが、今年は予算案の衆院通過前の2月10日に早くも第1回の会議を開催。その後も毎週木曜の定例日のほとんどで開かれ、ひとつの会期での開催数はこれまでで最も多い16回を数えた。

 先の通常国会でまず議論のテーマになったのは、コロナ禍でその実現の可否が論じられていた「オンライン国会」だ。憲法56条は、国会が議事を開き議決するには、総議員の3分の1以上の「出席」が必要だと規定している。憲法制定当時は想定されていなかったオンラインによる議事への参加が出席にあたるかどうか。憲法学者の見解も分かれていたが、衆院憲法審は3月3日、大規模災害や感染症流行といった非常時には、現行憲法のもとでも出席と認められるとする報告書を賛成多数で可決した。それまでの憲法審での審議ぶりからすれば、拙速との声も出るほど素早い対応だった。

拡大細田博之衆院議長(中央右)に「オンライン国会」についての報告書を提出する衆院憲法審査会の森英介会長(同左)=2022年3月8日、国会内

 衆院憲法審は、その後もコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻を受けた「緊急事態条項」の必要性や9条を軸とした安全保障問題、憲法改正案を承認するかどうかを問う国民投票を実施するにあたっての問題点などについて、各党の委員による自由討議を重ねていった。

 過去の参院選の年の開催状況と比べてみよう。2016年の通常国会での衆院憲法審査会の開催は、わずかに1回。幹事交代などの事務手続きをしただけで、実質審議はなかった。19年の通常国会は4回で、国民投票の際のテレビコマーシャル規制について参考人と質疑した1回を除けば、いずれも事務手続きだけで終わっている。

安倍首相退陣とともに消えた野党の「安倍改憲阻止」の旗印

 なぜ、今年の憲法審でこれほど活発な審議ができたのだろうか。憲法改正の旗を振っていた安倍氏が首相を退いてから1年あまり

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筆者

国分高史

国分高史(こくぶ・たかし) ジャーナリスト・元朝日新聞編集委員兼論説委員

上智大学文学部を卒業後、1989年に朝日新聞入社。佐賀支局、福岡本部社会部などをへて、政治部員として2002年の日朝首脳会談や2004年の米国大統領選、2005年の郵政解散・総選挙などを取材。2008年から論説委員として政治社説を担当するとともに、編集委員としてコラム「政治断簡」、「多事奏論」を執筆した。2021年からフリージャーナリスト・エディター。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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