溜飲は下がっても、得られる効果は???
2022年07月04日
今回の参院選でも国会議員の定数削減を公約に掲げている政党がある。最近の選挙では議員定数削減は有権者にアピールする公約のひとつかもしれない。しかし、国会議員の定数削減にはデメリットもあり、「溜飲を下げる」という以外はたいした政策的インパクトはない。選挙対策としては有効でも、政治的インパクトや政策的効果はむしろマイナスも多い。
筆者が現職議員のころ、あるいは、これから選挙に出るという立場だと「国会議員の定数削減は無意味だ」と主張しづらかった。国会議員の定数削減に反対するのは、選挙戦術としては愚策だ。しかし、政治の世界から身を引いて一市民の立場に戻った今、自由な立場から国会議員の定数削減の問題点を論じたい。次の3つの観点から冷静に議論する必要がある。
第一にそもそも日本の国会議員の定数は多すぎるのか?
第二に国会議員の定数削減は財政健全化に役立つのか?
第三に国会議員の定数削減にはデメリットはないのか?
結論から言えば、人口比で日本の国会議員はきわめて少ない。国際比較では「国会議員が多すぎる」というのは誤りである。むしろ世界でもっとも国会議員の定数が少ない部類に入るのが日本だ。OECD加盟国で人口比の国会議員の数がいちばん少ないのはアメリカである。その次に少ないのが日本である。
ただし、アメリカは連邦国家であり、州政府の権限が強く、州議会に上院と下院がある。アメリカの州には「州兵」がいて州政府が軍隊を持つほど力があり、日本的な「地方自治体」という表現はあてはまらず、国際標準の行政用語の「地方政府」という表現がぴったりだ。日本の中央政府の権限のかなりの部分はアメリカでは州政府が握っている。
OECD加盟国のうち国会議員の人口比の定数が少ない上位5カ国は以下の通りだが、メキシコやドイツも連邦制である。連邦制の国を除けば、日本はもっとも国会議員の定数が少ない国である。国会図書館の2015年のデータに基づいて、この5カ国の状況を見てみよう(一部の数字は便宜のため四捨五入した)。
事実として日本の国会議員の定数は少ない。選挙演説などでしばしば耳にする「国会議員が多すぎるから減らせ」という主張には根拠がなく、完全に誤りである。
一般的に「小さな政府」路線をめざす政党は
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