「政党」としての公明党~一学究の徒の政治学研究【11】
2022年07月26日
「論座」では「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」を連載しています。1999年に自民党と連立を組んで以来、民主党政権の期間をのぞいてずっと与党だったこの党はどういう政党なのか、実証的に研究します。11回目は、公明党と似通った点が少なくない日本維新の会の党組織について論じます。(論座編集部)
◇連載「『政党』としての公明党~一学究の徒の政治学研究」は「こちら」からお読みいただけます。
前回(第10回)の「実は公明党と似ている日本維新の会。どういう政党か~参院選で躍進。今後は……」に引き続き、日本維新の会について論じる。(維新に馴染みがない方はまず、第10回をお読みいただければ幸いです)。
国政政党としての維新は、以下のように変遷している。すなわち、日本維新の会(2012年9月)、維新の党(2014年8月)、おおさか維新の会(2015年11月)、日本維新の会(2016年8月)である(塩田潮『解剖 日本維新の会 大阪発「新型政党」の軌跡』平凡社、2021年、p.260)。一方、地域政党の大阪維新の会(2010年4月)は、そのままである。
国政の維新については、離合集散が続いたこともあり、学術的に政党組織研究の蓄積が不十分である。そこで日本維新の会の藤田文武・幹事長(衆議院議員)に、党組織の実態について詳細にお聞きした(2022年7月13日に筆者が取材・インタビュー)。
まず、若手活用の党内文化について、藤田幹事長は、次のような認識を示す。
松井一郎代表や馬場伸幸共同代表は「若手をどんどん使ったれ」と常々おっしゃいます。基本的にトップがそういう方針なので、例えば予算委員会でも、期数の上のベテラン議員である浦野靖人さんや井上英孝さんなんかは、「いいよいいよ、やれやれ!テレビに映るところに新人使ったれ!」みたいな感じで、どんどん若手をチャレンジさせて切磋琢磨させようという風土があります。これは、他党ではほとんどできないことですね。
松井さんも馬場さんも、「ほんまに仕事をがんばっているやつに日の目を見させてやれ」といつも言っていて、役職にかかわったり目立つことばかりをやりたがる人よりも、雑務やリサーチ、党務や各選挙の手伝いとか、地味だけど必要なことを着実にやっているメンバーにどんどん光を当ててやれ、という考え方です。僕自身もたくさんチャンスをもらってチャレンジさせてもらった立場なので、同年代や期数の若いメンバーもできるだけ前に出して、切磋琢磨できる環境を作れるように心掛けてきました。テレビに映る予算委員会や本会議、様々な討論会にも1期生議員にどんどんチャレンジしてもらいました。
若手にチャレンジの機会を積極的に与える党内文化は醸成されているようだ。
第二に、オンラインを政策決定過程に積極的に利活用している。筆者は各党に取材しているが、「オンラインでどうですか」と提案されたのは維新だけだった。
国政の政策決定過程は、部会→政調役員会→国会議員団役員会の流れで行われる。国対で判断が必要な案件については、政調役員会と国会議員団役員会の間に、国対役員会の意見を聞く。党議拘束は、国会議員団役員会で承認が出た段階でかかる。
部会は、従来、国会の委員会と対応して設置されていた。しかし、分野横断の議題が多いため、①厚労経財部会②総務財金デジタル部会③法務男女共同参画部会④外務安保部会⑤文科子ども部会⑥国交農水警察部会⑦経産環境規制改革部会――の七つの部会に再編成された。また、調査会や対策本部として、新しい経済社会調査会▽新しい外交安保調査会▽憲法調査会▽コロナ対策本部▽拉致対策本部、が政調会に常設されている。
各部会は部会長が主催し、国会の各該当委員会の理事や委員等が所属する。官僚のレクのほか、必要であれば有識者を招く。党内議論を経て、最終的に多数決(過半数)で議決する。採決で反対者がいることもあるが、「多数決で決まれば、最終的にはみんな従うという文化」だという(同幹事長)。部会での議論後、政調役員会での議論及び承認を経て、国会議員団役員会に上程する。
部会は、「今はほとんどオンライン」で開催されている。リアルの会場も用意しているが、どこからでも参加が可能だ。官僚からの部会レクも完全ペーパレス化。官僚から先にデータをもらった上で、「我々の全員がアカウント管理されたスケジュール共有ソフトに予定が入っており、そこに資料が貼り付けられています。民間企業に相当近いやり方になっています」とのことだった(同幹事長)。
第三に、党内議論のオープン化についてである。他党には見られない。注目すべきものとして、
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