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医系技官はなぜ保健所をPCR検査の要の位置に置いたのか~上昌広氏に聞く

コロナ対策徹底批判【第五部】~上昌広・医療ガバナンス研究所理事長インタビュー⑲

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

法的根拠のない厚労省の通知

――PCR検査については2020年3月6日から保険適用となりました。この時、良識ある国民はみんな喜びましたよね。これで、発熱などに苦しむ人はすぐにPCR検査を受けられるようになるはずだと。ところが、その後、やっぱり検査は増えなかったんですね。

 この時、厚生労働省は「37.5度以上の熱が4日間続くような人は保健所に相談してください」というような方針を打ち出しました。実質的には、この方針を聞いた国民はすぐに保健所に相談することをためらって、PCR検査を受けることを自主規制したんです。この方針打ち出しの目的は、国民をPCR検査から遠ざけ、検査対応でパンク寸前だった保健所を守ることだったわけですね。

 もちろん、そういうことです。この時、非常に問題だったのは、たとえば臨床医である私が、コロナの疑いがある人にPCR検査が必要だと考えて、検査会社にお願いしても検査会社はそれを受けてくれなかった、ということです。

 これについては、実は厚労省が検査会社に対して通知を出しているんです。

 ある民間検査会社は2020年2月12日、厚労省や国立感染症研究所からの依頼でPCR検査を受託することになったと関係者に通知した。それまでは感染研や保健所、地方衛生研究所だけがPCR検査を独占していたが、この日を境に民間検査会社も検査できるようになったという内容だった。

 しかし、この通知文には次のような一文があった。
「本検査は厚生労働省及びNIID(感染研)のみから受託するもので医療機関からの受託は行っておりません」

 PCR検査は依然、感染研や保健所、地方衛生研究所が独占、民間の検査会社も検査業務はするが、医師からの直接の検査依頼は受け付けない、という宣言だった。

 民間クリニックからの依頼を受けちゃいけないという通知です。これは明らかに法律違反です。医師法と感染症法というのは横並びの法律で、どちらかがどちらかに優越するということはありえない。

 つまり、保険が適用されたら、医師が検査が必要だと判断したものは検査会社は受けないといけないし、ましてや受けたらいけないなんていうことを示す法的根拠はないんです。

 厚労省が出したのは通知ですから、厚労省はあくまで「技術的助言で法的強制力はない」と言うでしょう。でも、今に至るまで日本のコロナ対策の問題というのは、法治国家なのに法的根拠のない助言を厚労省自身が出しまくっているということなんです。

 法的根拠がないので、検査会社が勝手にそういうことをやったことになっているんです。「みなし入院」というのがありましたが、それも単なる通知に基づいてやっていることなので、都道府県が勝手にやったということになってしまうんです。つまり、厚労省は単なる助言をしているだけで、すべての責任は都道府県や検査会社にあるんだ、ということになっちゃうんですね。

――ひどいですね。

 ここのところをメディアなり議会なりが叩かなきゃいけないんですけど、日本の場合は何もしないんですね。だから、厚労省の医系技官というのは、自分たちは安全なところから指図だけ出している状態なんです。

 ここの議論が全然ないんです。今は医系技官がその場の思い付きで通知を出しているだけなんです。思い付きだから、むしろ批判されない。

 だけど、思い付きで通知を出すということは、逆に言えば自分たちのキャパに合わせたことしかできない。つまり、保健所でやるのなら保健所の当面のキャパに合わせて「37度5分の熱が4日間」という具合にしか通知を出せないということになるんです。

拡大新型コロナの重点観察対象者に連絡を取る保健師たち=2022年7月26日、横浜市鶴見区の福祉保健センター

保健所長は医系技官の“食い扶持”

――あらためてお聞きしますが、コロナウイルス対策の要であるPCR検査の検査体制の中に、なぜ保健所をそこまでして入れなければならなかったのでしょうか。

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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