花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授
在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
世界情勢が不安定化するなかでの岸田政権
西側は強力な対ロ制裁を実行するが、ロシアも負けていない。実弾はウクライナの地で飛び交うが、もう一つ、ロシアと西側諸国間で制裁を巡り別の戦いが進行する。どちらが先に白旗を上げるか、戦いは長期戦だ。その中で、一つの天王山が今冬に迫る。そういう折も折、この重要な時に西側の政権基盤が緩み出した。日本のみ例外かと思いきや、安倍元首相の死去が思わぬ暗雲を投げかける。
ロシアの欧州に対する締め付けが強烈だ。武器は天然ガスの供給削減。EUは、既に石炭、石油の輸入停止を合意済みで、EUのミシェル大統領は、更に天然ガスをもと意気込むが、掛け声だけで、実際はなかなかそういかない。EUが天然ガスも輸入停止すれば制裁は一段と効果的になるが、EUが受ける被害も尋常でないからだ。ロシアは、その西側の弱みを突く。
EUのフォンデアライエン委員長は、ロシアはガスを兵器として使うと非難するが、実際、ロシアにとりガスは石炭、石油に比べ兵器としてはるかに「使い勝手」がいい。欧州にとり、石炭や石油は他国からの輸入で代替可能だが、ガスはパイプライン輸送が止まればLNGで代替するしかない。
ところがLNGは運んできたものを専用施設で気化させねばならず、その建設は一朝一夕でできるものでない。だから、パイプラインが止まれば代替措置は限られる。しかも、石油輸出はロシアGDPの10%を占めるが、ガスは2%でしかなく、ガスが輸出されなかったとしてもロシアにとっての痛みは限定的だ。
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