縮まらない貧富の格差を「税制」から読み解く
2022年07月29日
「共同富裕を着実に推進する歴史的段階に入った」
中国を率いる習近平・共産党総書記(国家主席)が、重要経済政策を企画する中央財経委員会でこう宣言したのは昨年8月17日のことだ。
ところが、いざ政策実行となると、どうもうまく進まない。
共同富裕の実現を阻んでいる要因について、ここでは主に税制から考えてみた。
中国社会の所得の不平等は、ジニ係数(完全な平等が0。1に近づくほど不平等の度合いが大きくなる)でみれば、政府が公表した2020年の数値が0.468で、近年はこれに近い数値で推移している。主要国より不平等の度合いは大きく、社会が不安定化する警戒水準とされる0.4を超えている。
また、所得上位20%、下位20%の世帯の平均収入を比べると、習政権下の2013年以降、倍率は10倍を超えたままで、最近は数字が動いているが、改善したとは言い難い(グラフ参照)。中国経済は分配面の不十分さを抱え続けているのである。
この現実に対し、習氏が中央財経委で繰り出した政策方針は、不平等是正にいよいよ切り込むかにみえた。
当時報じられた通り、発表文には「3つの分配」が明記された。
まず第1次分配は市中の経済活動を通じた分配であり、資本と労働の間の分配や労働者間の分配を言う。第2次分配は、それらを税や社会保障制度を通じて移転することを指す。一般に言う所得再分配である。さらに第3次分配とは、道徳心に基づく自発的な寄付を意味する。
計画経済を放棄した今、第1次分配にメスを入れることは難しい。日本を含む多くの国では、第2次分配、すなわち税制と社会保障で再分配を図っている。
ところが、まず焦点が当たったのは第3次分配だった。
中央財経委の方針が出た2カ月後、全国人民代表大会常務委員会が一部地域で試験的に不動産税を導入すると決定した。家計資産の大半を占める不動産は大都市部で価格高騰が続き、持てる者と持たざる者との差を深刻化させてきただけに、課税は的を射たものと言えた。しかし今年3月になって延期が発表された。抵抗が大きかったこと、不動産市況が低迷していたことなどが理由とみられている。
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