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「自民vs立憲」に飽き飽きした世論~安倍政治を超克するために何が必要か

偽りの政治主導では激動の時代に対応できない。参院選を受けて政治がするべきことは

福島伸享 衆議院議員

あまりにも古い権力構造

福島 そうです。安倍政権にはこの他にも問題があります。権力構造があまりにも古いというのもそのひとつ。私は“東洋的専制主義”と呼んでいるのですが、これは小泉純一郎政権と比較すると明らかです。

 小泉首相は郵政民営化を実現するため、自民党の論理を無視して衆議院の解散に打ってでました。自らが進めたい政策を示し、国民に選択を迫ったわけです。これは、ある意味で二大政党時代のあるべき政治の姿だったのです。

 理念が明確な政策を選挙で国民に示し、賛同を集めれば政治主導で実現するというやり方を、それなりに行ったのが小泉政権だとすれば、安倍政権は確かに国政選挙は連戦連勝だったかもしれませんが、国民の側に何かを選んだという意識はないと思います。それは安倍政権が理念に基づく具体的な政策を提示していないからです。

 自民党総裁に返り咲いた安倍氏が初めて挑んだ2012年衆院選のキャッチコピーは「日本を、取り戻す。」でした。具体性を欠く、情緒的な、愛国意識みたいものなのに訴えるやり方は、55年体制で見られた、保守か革新か、自由主義が共産主義かといったイデオロギー的な対立のを持ち出して選択を迫る、非常に古い方法です。

 2014年の衆院選では「景気回復、この道しかない。」というキャッチフレーズを打ち出しています。「この道は正しいのだから、お任せください」と、「白紙委任」を求めるやり方です。いずれも、国民に具体的な選択肢を示し、選んでもらうというものではありません。

――情緒的で選択肢を示さない政治は、多様さを増す今の時代にそぐわないのではないでしょうか。

福島 ええ。それゆえ、さまざまな問題が生じました。ひとつは、お互いがお互いの陣営を叩き合う状況が、ネットなどで生まれたことです。「悪夢の民主党政権」には「アベ政治を許すな」で対抗するという具合に、世論の分断が顕著になりました。

 こうした傾向はさらに進み、権威と権力が一体となり、「政府に反対する人は非国民だ」という風潮さえ生まれました。この「権威主義」が引き起こしたのが、森友・加計学園や「桜を見る会」の問題であり、統計や公文書の改ざんといった、客観的で公正であるはずのインフラが毀損(きそん)されるという事態でした。

拡大「桜を見る会」であいさつする安倍首相(当時)=2019年4月13日、東京都新宿区の新宿御苑(代表撮影)

「内なる近代化」を実現していない日本

――先ほど、東洋的専制主義と言われましたが、日本には「権威主義」がはびこる土壌があるのでしょうか。

福島 日本は明治以降近代化をしたように見えながら、、夏目漱石が言う「内発的」な「内なる近代化」が実現していません。立憲政治や政党政治、普通選挙を導入し、見かけは民主主義なのですが、国民が自らの価値観に則って投票し、結果について自ら評価をくだす、自立した人間を前提とする民主政治は未成熟で、ともすると、長い物にまかれたり、権威にすがったりします。

 55年体制の頃はそれでよかった。自民党は単なる「社会主義化」を防ぐという意味での「保守」政党ではなく、国民皆保険をはじめとする社民主義的な政策も取り込む“国民政党”だった。だから、自民党に任せておけば、仕事もあるし、適正な配分もしてくれるという「神話」が成り立ちました。国民にも「政権選択」が必要だという発想はありませんでした。

拡大福島伸享さん=衆院議員会館

 冷戦の終焉とともに始まった平成時代、55年体制が幕を下ろし、衆議院に小選挙区制度が導入されて、自民党と民主党による二大政党が並立する政治状況が生まれました。国民にも「政権選択」を求める意識が芽生え、2009年、民主党による歴史的な政権が実現しました。

 ところが、国民の期待を託された民主党政権が、わずか3年で瓦解してしまった。「政権選択」をした国民の多くは民主党政権の失敗を見て、「やはり自民党しかない」「自民党に任せれば大丈夫」というかつての意識に先祖返りしてしまいました。

 本来、民主政治とは、まさに国民が主権者であって、国民の意思を実現する政府を国民による投票によってつくるものなのに、日本ではいつまでたっても国民が「統治の客体」として、政府に何かをやってもらう「お客さん」でい続けてしまっています。

 問題は今、日本が置かれている社会情勢や国際環境、技術革新が、かつてとはまったく違っているということです。こうした変化に対応できるよう、民主的なプロセスを通じて国民を巻き込み、国民の意思で国を動かしていかなければならないのに、第2次安倍政権の7年8カ月間の間に、その必要がなくても大丈夫なように国民に思わせてしまいました。現在の日本が陥っている苦境はその結果です。

――自民党内にそうした現状に対する危機感はないのでしょうか。

福島 現在、自民党は2012年に安倍政権が誕生して以降政治家になった議員が、衆参ともに過半数を占めています。彼らの多くは、「安倍一強」のなかで権威主義的なものを受け入れてきました。

 そういう議員たちは、国際情勢が厳しくなったり、経済的に苦しい状況に陥ったりすると、権威を背景に愛国的な主張を強気に言い募ることが、国民の支持を得る道だと勘違いしがちです。ロシアのウクライナ侵攻後の国際情勢や経済の変化を受け、中国が悪いとか、もっと防衛費を増やせといった「進軍ラッパ」ばかりが自民党で目立つのは象徴的です。そんな単純なことで、日本が置かれた状況を変えることなんてできないのはおろか、さらに苦境に陥るのは明らかなのですが。これもまた、安倍政権がもたらした問題でしょう。

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筆者

福島伸享

福島伸享(ふくしま・のぶゆき) 衆議院議員

1970年生まれ。1995年東京大学農学部を卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省。橋本龍太郎政権での行政改革や小泉政権での構造改革特区制度の創設の携わる。2009年衆議院議員初当選(民主党)の後、2021年の衆議院議員選挙で3選。現在無所属で5人会派「有志の会」に所属。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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