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医系技官が日本の医療ビジネス・システムに与えた悪しき影響~上昌広氏に聞く

コロナ対策徹底批判【第五部】~上昌広・医療ガバナンス研究所理事長インタビュー⑳

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

核酸増幅検査と医系技官の壁

――ところで、日本がPCR検査をサボってきたために、国際的に見て検査技術が遅れたということはあるんでしょうか?

 その通りですが、日本が懸命にやっていたら、日本の企業が勝ったかどうかは分かりません。

――たとえば核酸増幅検査は、アメリカとか中国とかではかなりポピュラーにやっていると聞きますが。

 核酸増幅検査(Nucleic acid Amplification Test=NAT)は、遺伝子の一部を取り出してその核酸を増幅させ、増えた核酸を検出することでウイルス遺伝子が存在するかどうか確認する検査方法。PCR検査とは原理的に異なる複数の増幅方法が開発されている。

 この技術は、人のガン遺伝子診断がベースにあるんです。全ゲノムシークエンスを行うのは、ガンと小児先天疾患の二つです。

 ここでも、厚労省医系技官が壁になっているんですよ。こういう検査は本来であれば、ガン患者を診る病院と検査センターを中央化してやればいいんです。そういうセンターはどこにあってもいい。

 ところが、医系技官は「国立がん研究センター」のような厚労省直下の特定の病院に限定しちゃったんです。それで、国立がん研究センターと、神戸市にあるシスメックスという検査会社や中外製薬といった特定の企業が組んでやることになってしまっているんです。

 医系技官は、こうした遺伝子診断のマーケットを統制してしまったために、いざという時の企業がないんですよ。いわゆる「感染症ムラ」の中の感染研の役目を国立がん研究センターが果たしているわけですが、ここに集中させているので、他の企業が育っていないんです。

海外売上高比率が8割以上の武田薬品

――医系技官がマーケットを統制していなかったら、日本で世界的な企業は育ったでしょうか。

 それはどうでしょうか。世界的な企業が育ったか。あるいは、単純に世界最先端のサーモフィッシャーに全部やらせろというふうになったのか。私はたぶん後者だと思いますよ。

 これは厚労省が悪いし、甘い汁を吸ってきた日本のメーカーも悪いと思います。この表を見てください。(Answers News「主要製薬12社 海外売上高比率は2ポイント増の62%に…中外、協和キリンが急上昇」に掲載された表から引用)

拡大出典 Answers News「主要製薬12社 海外売上高比率は2ポイント増の62%に…中外、協和キリンが急上昇」

 これは日本の大手製薬メーカーの海外売上高比率です。トップの武田薬品工業が2020年度2兆6381億円の海外売上で、総売上の82.5%がグローバル、世界なんです。武田薬品はもう完全に日本から出ていったと言っていいんじゃないですか。アステラス製薬で77.7%、塩野義でも56.9%が海外売上。日本の製薬会社なのにこんな状態です。

アメリカと一緒にやるしかない日本

――海外の売上がこんなにあるというのは、日本の製薬市場にどこかゆがんだところがあるということですか。

 そうです。

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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