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コロナ「空気感染」への対応から見る「感染症ムラ」の問題~上昌広氏に聞く

コロナ対策徹底批判【第六部】~上昌広・医療ガバナンス研究所理事長インタビュー㉒

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

コロナは屋内感染が大半という事実が意味すること

――空気感染について、「研究者の間で議論の途上にあるところと認識しており」というのは、驚くべき回答ではありませんか。

 もちろん研究の途上であることは認めますが、空気感染のウェイトが高いのであれば、現実の対策としてその対応を取らなければなりません。空気感染するのであれば、飛沫感染対策はほとんど意味をなさない。「三密」をコントロールするだけでは意味がないんですね。

 なによりも一番重要なことは、コロナは屋内感染が大半で、屋外ではほとんど感染していないという事実です。この一例からしても、空気感染のウェイトが極めて高いことが予想されます。飛沫感染や接触感染であれば、屋外でも感染しますからね。このことは2020年3月から言われていました。

 これまでの日本の対策を考えてください。国民はよく覚えていると思いますが、飲食店を非常に厳しく規制してきました。しかし、これにはもう妥当性がないんですよ。飛沫感染などももちろんゼロではないですよ。でも空気感染のウェイトが極めて大きいのであれば、飲食店にだけ営業制限をかける合理的理由はもうないんです。

 一方で、飲食店などが入っているビルの換気は、コロナウイルスの感染拡大に非常に大きく影響します。だから、そういうところには二酸化炭素モニターを使って合理的な対応を取ることが重要です。

 満員通勤電車の問題もあります。ここでの換気の問題などは、まさに感染研が研究すべきものです。でも、感染研はJRや営団などとのハレーションを恐れてやらないのではないでしょうか。こういう問題は大学に研究費を補助して研究させた方がいいんですね。

飲食店の規制は合理的だったのか

――感染研はそもそもやる気がないんじゃないですか。

 はっきり言って、学者じゃないんです。科学誌『サイエンス』は総説論文で明確に「空気感染」を打ち出しています。Airborne transmission、あるいはairborne infectionとはっきり書いている。文字通り「空気感染」という意味です。分科会の「専門家」が、「空気感染とエアロゾル感染は別だ」などと些末(さまつ)な議論をしていましたが、全然お話になりません。

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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