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コロナ「空気感染」への対応から見る「感染症ムラ」の問題~上昌広氏に聞く

コロナ対策徹底批判【第六部】~上昌広・医療ガバナンス研究所理事長インタビュー㉒

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

 臨床医でありながら世界最先端のコロナウイルス対策を渉猟する医療ガバナンス研究所理事長、上昌広氏に対するロング・インタビューは最終の第6部を迎えた。6部では「空気感染」の問題を中心に、日本の感染症対策を決める「感染症ムラ」の構造的な問題を見ていく。

拡大上昌弘・医療ガバナンス研究所理事長

感染経路についての感染研の驚くべき報告

――ロング・インタビューを締めくくるこの第6部では、厚生労働省・医系技官のコロナウイルス対策の中で最大の失敗の一つである「空気感染」の問題について、まずお聞きしたいと思います。よくご存じだと思いますが、2022年2月1日に、感染症や物理学などの日本の専門家8人が国立感染症研究所に対して質問状を送りました。

上昌広 連名で抗議しましたね。

――そうですね。抗議の意味合いを含む質問状を送ったんです。というのは、22年1月13日に感染研が公表したオミクロン株に関する第6報にこんなことが書いてあったんです。

 「現段階でエアロゾル感染を疑う事例の頻度の明らかな増加は確認されず、従来通り感染経路は主に飛沫感染と接触感染と考えられた」

 感染経路については、空気感染(=エアロゾル感染)がメインであることが世界の医学界、科学界で常識になっている時に、大変驚くべきことを報告しているんです。

 もう宗教ですね。

 世界中の医学者・科学者は、2020年2月から3月にかけて横浜港で展開されたダイヤモンド・プリンセス号の問題を注視する中で「空気感染」の可能性に気が付いた。感染者とは別の船室にいる人がエアコンのダクトを通じてコロナに感染した事実が判明したからだ。これを米国最先端の科学者グループから知らされた東京大学・シカゴ大学名誉教授の中村祐輔氏が上昌広氏に連絡。日本の一部でも知られることになった。

 WHO(世界保健機関)は当初、「空気感染は一般的ではない」としていたが、2021年4月末に「一般的な感染経路の一つ」と認めた。米国の世界的科学誌『サイエンス』は同年8月27日号で「呼吸器系ウイルスの空気感染」という総説論文を掲載し、「コロナウイルスの主要な感染経路は空気感染」という理解が世界の医学界、科学界に定着した。

 しかし、厚労省・医系技官はこの事実をなかなか認めず、日本のコロナウイルス対策の大半は世界の医学界とは方向が異なるものとなった。

――これを報じた毎日新聞に対して、質問状を出した専門家代表の本堂毅・東北大学准教授はこうコメントしています。

 「世界では接触感染が起きるのはまれと考えられているのに、感染研は主な感染経路として、いまだに飛沫感染と接触感染を挙げている。国内のコロナ対策は感染研の見解を基に展開されており、このままでは無用な感染拡大を起こしかねない」(2022年2月1日付毎日新聞)

 その通りですね。

――これに対して、感染研の脇田隆字所長から2022年2月7日に返答がありましたが、これがまた驚くべき内容です。

 「ご質問の内容につきましては、研究者の間で議論の途上にあるところと認識しており、学術界において科学的な知見を基に合意形成がなされていくべきものと考えております。国立感染症研究所といたしましては、今回お問い合わせのあったご意見も参考にしながら、今後とも最新の科学的な知見に基づき感染症対策に資する情報発信を適切に行っていく所存です」

 まあ役人が書いたものでしょう。

拡大国立感染症研究所=東京都新宿区

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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