メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

豊かな森林国・日本を脅かす「放置林」「乱開発」の厳しい実態~山の日に思う

「日本熊森協会」「奥山保全トラスト」の地道な活動から見えてきたもの

赤松正雄 元公明党衆院議員 元厚生労働副大臣 公明党元外交安保調査会長 公明党元憲法調査会座長

人工林の放置が招いた森林保水力の激減

 つい2日前の8月9日には、両団体の生みの親である森山まり子さんらと共に、岡山県の若林原生林と、兵庫県で最も人工林の多い宍粟市を訪れて、見学してきたばかりです。実は20年ほど前にも同じところを見たことがあります。光すら差し込まないスギやヒノキの人工林は惨憺(さんたん)たる状況です。ブナ林やナラの木が生い茂る原生林との差は一目瞭然です。

 つまり、スギやヒノキの針葉樹を、政府は拡大造林政策によって植えまくり、広葉樹林を国を挙げて潰してきたといえるのです。その背後には、林業の発展が高度経済成長とあいまって期待されたのですが、外国材輸入の急増と共に敢えなく暗転したことがあります。木材が売れなくなったのです。やがて全国至るところで、人工林は適切な伐採もされず、放置されたままで時間が過ぎました。

 徳島県の美波町の山あいに、地域おこしのサポートのために先年、訪問したことがあります。その際に同地に住むHさんが、戦後間もなく父親が一所懸命植えたスギの針葉樹林を、息子である自分の代になって伐採し、広葉樹林に戻さねばならなくなった、と自嘲しつつ語っていたのが印象的でした。

 親父の過ちを息子が直すこのケースはまだいい方で、人工林は放ったらかしで手付かずのままの状態です。その結果、森林の保水力は激減し、大雨の降るたびに河川の氾濫(はんらん)が引き起こされてきました。

拡大宍粟市の人工林全景。うっそうと茂った杉の人工林。全国にこうした森林が放置されたままになっている。(日本熊森協会提供)

森林環境税約620億円で森林整備を促進

 3年前、国は「森林環境税・森林環境譲与税法」を制定しました。全国民からひとり当たり1000円を徴収することで得た森林環境税約620億円を、森林整備とその促進にあてるというものです。実際に徴収されるのは2024年からですが、全国の地方自治体には、森林環境譲与税の名の下に既に交付されています。前倒しで政府が立て替えた格好です。

 この法制定は、一見、本格的な森林整備に取り組むべく政府が立ち上がったかに見えます。しかし、それには人工林を天然林に再生する取り組みが欠かせません。

 「熊森協会」は国会審議の最終段階で、「すべての国民が負担する森林環境税だからこそ、日本の森林の最重要課題である放置人工林を保水力豊かな天然林へ再生することに使われるべき」だと、強い要求活動を展開しました。私も及ばずながら、衆参委員会の現場との橋渡し役をしました。

 その結果、法施行に対して「放置人工林の広葉樹林化とそのための体制整備」を政府に求める附帯決議を付けることができました。その過程では、同協会の強い意志のもとに集められた2万6572人の署名簿も提出されました。

拡大宍粟市の人工林。表土流出が止まらない。(日本熊森協会提供)

疑問が残る環境譲与税の使い方

 コロナ禍とほぼダブるこの3年間に、環境譲与税として林野行政の最先端の自治体に届いた予算がどう使われているか。大いに気になるところです。

・・・ログインして読む
(残り:約2417文字/本文:約5122文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

赤松正雄

赤松正雄(あかまつ・まさお) 元公明党衆院議員 元厚生労働副大臣 公明党元外交安保調査会長 公明党元憲法調査会座長

1945年兵庫県生まれ。慶応大学法学部政治学科卒。公明新聞記者、市川雄一衆院議員秘書などを経て、1993年衆院初当選。以来6期20年。公明党外交安保調査会長、同憲法調査会座長、厚生労働副大臣等を経て、2013年に引退。現在、一般財団法人「日本熊森協会」顧問、公益財団法人「奥山保全トラスト」理事、一般社団法人「安全保障研究会」理事等を務める。ホームページに毎週、読書録、回想記、思索録などを公開中。著書に、『忙中本あり』『77年の興亡ー価値観の対立を追って』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

赤松正雄の記事

もっと見る