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岸田政権に忍び寄る旧統一教会問題の影

支持率下落の先に見えるもの

花田吉隆 元防衛大学校教授

 西側主要国で政権基盤がそろって動揺しなにやら不穏な空気が流れる中、日本のみは岸田政権が盤石の態勢にあると思われていた。確かに、参議院選挙で自民党は圧勝、改憲勢力で2/3以上を占める等、政権は順風満帆の勢いだった。それがここに来て、急に暗雲が漂い始めた。この暗雲は、岸田政権の今後に思わぬ影響を及ぼしかねない。岸田首相は、これを軽く考えるべきではない。

 エネルギー危機が世界中に影を落とし、インフレが猛威を振るう。事態は日本も同じで、経済の先行きに不透明感が漂う。新型コロナの新規感染者は、東京で一日4万人という数字を記録した後、現在、やや小康状態にあるものの、今後このまま推移するか定かでない。全国的に医療体制がひっ迫し、既に沖縄等、病床使用率が危機的状況のところもある。重症者数、死亡者数は増加の勢いだ。行動制限なしのお盆を終え、果たして、状況がどう変化するか、なお、注意深く見守る必要がある。

会見する「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の田中富広・日本教会会長=2022年8月10日、東京都千代田区

 そういう中、思わぬ難題として浮上したのが「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)との関係を巡る問題だ。世論はこの問題に高い関心を払う。霊感商法等、社会的に問題とされる宗教団体と政治がいかなる関係をもち、また、今後、その関係を断ち切っていけるかは今や国民の最大の関心事だ。ところが、岸田首相はこれに有効な手を打てていない。

改造後の内閣支持率の異例な下落

 世論調査で、内閣改造後の支持率が下落している(支持率は読売が51%と前回調査より6ポイント下落、NHKが46%で13ポイント下落。これに対し、共同通信は54.1%で3.1ポイント上昇)。内閣改造で普通、支持率は上がるものだ。逆に下がるというのは異例だ。その大きな要因が旧統一協会を巡る問題とされる。

記念撮影に臨む第2次岸田改造内閣の大臣政務官ら。前列中央は岸田文雄首相、右隣は松野博一官房長官=2022年8月12日、首相公邸

 当初、岸田首相は、内閣改造でこの問題に終止符を打てると考えていた。改造前の内閣で、旧統一教会との関係が指摘された閣僚は19人中8人だった。これらを交代させ、新たに「関係のない」クリーンな人材で組閣すればいい。岸田首相は、「当該団体の関係をしっかりそれぞれ点検してもらい、結果を明らかにしてもらう」と発言、入閣候補者それぞれの責任で関係を明らかにするよう指示し、また、「首相は、関係を点検し見直すことを厳命し、それを了承したもののみを任命する」と述べ、首相としては、それ以上の責任はないとした。

 しかし、結果は、旧統一教会との関係が疑われる閣僚が任命後次々と現れ、ついに19人中7人に達した。これに党の政調会長にまわった萩生田氏を加えれば8人だ。更に、副大臣、政務官レベルでも54人中18人が何らかの関係があるとされる。気になるのは、いずれも任命された後に関係を公表していることで、これでは首相の「厳命」は何だったのかと思わざるを得ない。要するに、「厳命」はしたものの「守られることはなかった」ということだ。だからといって、岸田首相がこれを表立って問題視するようでもない。

旧統一教会問題について、取材に応じる自民党の萩生田光一政調会長(中央)=2022年8月18日、東京・永田町

 政権や自民党内には、今後、旧統一教会とかかわりを持たないようにすればそれでいい、との空気が広がっているようだが、もしそうだとすればそれは看過できることではない。

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