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ケルトの「虎」から「フェニックス」へ~アイルランドという“鏡”に映るニッポン

島国で資源小国という共通項、浮上のカギはどこに

逢坂 巌 駒澤大学 法学部准教授

 私は日本政治を対象に政治コミュニケーションを研究する大学教員である。この4月から縁あってアイルランド共和国のUCD(University College of Dublin;アイルランド国立大学ダブリン校)で在外研究を送らせてもらっている。

 専門は日本におけるメディア政治で、歴史的にどのような変化が起こったかを研究している。今回、ヨーロッパなどとの比較研究を行うべくこちらにきた。研究の合間にここから見える日本政治やメディア政治について書かせてもらう機会を得たが、まずは久しぶりに訪れたアイルランドの変化についてお話ししたい。

アイルランドはこの40年間、大きく変化した。一人当たりGDPは世界最高水準、人口も増大している。拡大アイルランドはこの40年間、大きく変化した。一人当たりGDPは世界最高水準、人口も増大している。
アイルランドはこの40年間、大きく変化した。一人当たりGDPは世界最高水準、人口も増大している。拡大アイルランドはこの40年間、大きく変化した。一人当たりGDPは世界最高水準、人口も増大している。

大酒飲みが多い辺境の貧しい国?

 アイルランド。近年は毎年3月に同地の聖人を記念するセントパトリックデーのイベントが日本各地で行われるようになり、緑の帽子や服を身につけたパレードを見たりして親しみを感じる人が多くなってきているかもしれない。しかし、アイルランドってどんなとこ?と正面から聞かれると、多くの読者はあまりイメージが湧かないことと思う。

 わたしの回りでも、アイルランドにいくというと「それどこ?」との反応が大半だった。

 友人たちからは「ギネスやアイリッシュウヰスキーが飲めるね」とか、「3年前のラグビーワールドカップで日本が勝った国だよね」。歴史好きからは「イギリスの植民地だったんだよね? カトリックが多くて独立や独立後も北でいろんな悲劇があったんでしょ?危なくないの?」とか、文学好きからは「イエイツやジョイスの故郷ですね。小泉八雲もアイルランド生まれですよね。素敵ですね」などとも言われた。多くの人は知らないし、知っていてもギネスの大酒飲みの住むヨーロッパの端っこの貧しい悲劇の国……。そんな感じだろうか。

 実は、アイルランドは40年ぶり2回目の訪問である。3年前に亡くなった父の仕事につきあって、1979年、当方15歳の春にふたつき月ほど家族とともに滞在した。

『アイルランドの反学者』拡大B .ビーアン『アイルランドの反逆者』晶文館

 父(収)は、いわゆるケルト系文学を研究していた英文学者だった。W.B.イェイツについてのいくつかの論文と同じく劇作家であり詩人のブレンダン・ビーアンの自伝の翻訳本『アイルランドの反逆者』などを遺した。

 作家はそれぞれに時代や生まれ育った場所との関係を持つものであるが、長年にわたるイギリスの支配と抑圧、そしてそこからの独立を求める闘いが進行していた近現代のアイルランドの作家にはその関係は深い。そこでは作家の言葉が現在進行形の闘いと響き合う。その中でもイエイツとビーアンはアイルランドの闘い=ナショナリズムと直接に深く関連したといえるだろう。

 ノーベル文学賞受賞者のイエイツは1910年代にアイルランド文芸復興運動を牽引し、その詩作や劇で多くの運動家に影響を与えた作家である。イギリスからの独立を求めて行われたイースター蜂起に際しては、失敗して処刑された16名のリーダーたちを弔い「Easter 1916」といった代表作を書いた。

 一方、ビーアンは1930年代末からイギリスとの独立闘争にIRAの若きメンバーとして参加し、都合7年間を少年院や監獄で過ごした人物である。出獄後に自伝的な小説や芝居を書いて有名となった。テレビなどにも出演し人気があったが、大酒飲みで41歳の若さで死去した。

トリニティ大学の前の本屋にディスプレイされていたアイルランドの作家たち(向かって左からジョイス、ワイルド、ビーアン、バケット、メイヴ・ビンチー拡大トリニティ大学の前の本屋にディスプレイされていたアイルランドの作家たち(向かって左からジョイス、ワイルド、ビーアン、バケット、メイヴ・ビンチー

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筆者

逢坂 巌

逢坂 巌(おうさか・いわお) 駒澤大学 法学部准教授

東京大学法学部卒。同大学院法学政治学研究科修了後、同博士課程中退。同大学助手、立教大学社会学部助教などを経て現職。専門は現代日本政治、政治コミュニケーション。著書に『日本政治とメディア』(中公新書、2014年)『「戦後保守」は終わったのか』(KADOKAWA、2015年、共著)『政治学』(東京大学出版会、2022年、共著)『テレビ政治』(朝日選書、2006年、共著)など。現在はアイルランドに滞在、University College Dublin, Ireland Visiting Professor。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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