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韓国人はなぜ統一教会に関心がないのか──在韓日本人信者は「圏外」にいた

伊東順子 フリーライター・翻訳業

 日本では旧統一教会(世界平和統一家庭連合)をめぐって大騒ぎになっているという。

 「韓国での反応はどうでしょうね?」と編集部から聞かれたのだが、あまり話題になっている印象はない。もちろん安倍元首相の事件は衝撃をもって伝えられたし、その直後にはテレビ局がツイッターで「統一教(トンイルキョ)」(韓国ではこの呼び方が一般的)についての情報提供などを求めていたこともあった。でも時間がたつにつれて人々の関心は薄れ、どんどんメディアの報道などがヒートアップしていく日本とは対照的である。

日韓の温度差

 その日本のメディアに対して8月18日、ソウル中心部で信者らによる抗議デモが行われたが、そちらも韓国ではほとんど報じられていなかったようだ。産経新聞の黒田勝弘記者も「現地メディアはほぼ無視」と書いていたし、少なくとも主要ニュースでは全く取り上げられていなかった。

ソウル中心部の光化門で2022年8月18日、抗議集会を開く「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の信者ら拡大ソウル中心部の光化門で、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)報道などに抗議する信者たち=2020年8月18日

 「あの程度のデモは韓国では小規模すぎるから」と言う人もいる。たしかに韓国で3500人規模(警察発表)のデモは大きいほうではないが、たとえ少人数でも人々の関心が集中するものなら報道はされる。メディアの報道姿勢も一般国民の関心も、日韓両国でかなり温度差があるようだ。

 その原因は一つではないと思うが、まずは今の韓国で統一教は、宗教団体としてはあまり目立たないということがある。「合同結婚式」や「日本人妻」を連想する人もいるが、むしろ「統一グループ」といった企業体のイメージのほうが強い印象がある。以前はメッコールという清涼飲料水が有名だったが、最近は学校法人の名前をよく耳にする。特に清心国際学校は中高一貫の特色ある英才教育が有名で、教育熱心な親たちの間では評価が高い。

 宗教団体が学校を経営するのは世界中で普通のことであり、日本でも上智大学や立教大学などのミッション系スクールの伝統校から、PL学園や天理高校のようにスポーツなどで有名になった他宗教の学校もある。いずれの場合も、在校生の多くは母体となっている宗教団体とは関係しておらず、そこは韓国にある統一教系の学校についても同様だ。

 「息子の志望校に考えていたけど、本人に言わせると自分にはレベルが高すぎるからって」

 周囲に悔しそうに言っていた親などもいたが、宗教色に関する心配はあまり聞かない。逆に、学校の評判が良いからと、その母体である宗教団体を評価する声も聞かない。もちろん、正統派のクリスチャンの中には、吐き捨てるように言う人もいる。

 「あそこは異端だから」

 韓国はクリスチャンが多い国であり、特にプロテスタント系はそれぞれの宗派の勢力争いが激しいこともあり、当然ながら他宗派についての知識もある。すでに統一教は「異端認定」され、それもあって、表立った宗教活動はしにくくなっていると言う人もいる。

 「それに今は新天地教会のような団体が、もっと深刻な問題ですよ」

 クリスチャンである友人は、心底嫌そうな顔をして言っていた。

 たしかに一般の韓国人にとっては、新型コロナの集団感染で注目された新天地教会などのほうが、直近の話題だった。韓国政府やソウル市などの新型コロナ防疫指針を無視し、また名簿提出などの要請にも従わなかったことなどで、反社会的なイメージが広く浸透した。勧誘の仕方や、集団生活、献金問題、また若者の信者が多いことでも大きな問題となっていた。それ以前でも、セウォル号事件の際に注目された「救援派」など、韓国では宗教団体がらみの問題は周期的に起こっている。

 そもそも韓国は日本に比べて宗教活動に熱心な人は多く、韓国政府の調査によれば宗教人口は約2150万人と全人口の約4割、うち仏教徒が約760万人、キリスト教徒はプロテスタントが約960万人、カソリックが約380万人となっている(『2018年韓国の宗教現況』)。

 このうちプロテスタント系としては374の宗教団体が登録され、中にはかなり過激な宣教活動や政治活動をしている団体もある。2020年夏には新型コロナの感染爆発の中で、当局の中止要請を押し切って大規模な反政府(当時は文在寅政権)集会が開かれたが、中心メンバーにはサラン第一教会などの宗教保守勢力が名を連ねていた。そういう場面でも、統一教の名前が表に出てくることはほとんどない。

ソウル中心部で開かれた文在寅政権を批判するデモ。集団感染が判明した教会の信者も参加し、そのうち十数人の感染が判明した=2020年8月15日、東亜日報提供拡大ソウル中心部で開かれた文在寅政権を批判するデモ。集団感染が判明した教会の信者も参加し、そのうち十数人の感染が判明した=2020年8月15日、東亜日報提供

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筆者

伊東順子

伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業

愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国カルチャー──隣人の素顔と現在』(集英社新書)、『韓国 現地からの報告──セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)など、訳書に『搾取都市、ソウル──韓国最底辺住宅街の人びと』(イ・ヘミ著、筑摩書房)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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