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ウクライナ侵攻から半年 出口へのカギを握るのは?

欧州の分断と米国の厭戦気分

花田吉隆 元防衛大学校教授

 ロシアがウクライナに侵攻し8月24日で半年だ。ウクライナからは日々、悲惨な現状が伝えられる。戦火の中、家族を失い住む場所もなくなった、着の身着のまま慣れ親しんだ場所を後にしたが、明日からどうやって生きていったらいいのか、そういう惨状の報告が後を絶たない。

 そもそもこのロシアの戦争に大義はない。唯一、NATO拡大がロシアの安全を脅かし、ウクライナだけは何としても死守しなければならないとプーチン大統領が考えたことに、ほんのわずかな理があるとでも言えるだろうか。国際秩序を守るべき立場にある国連常任理事国が、自ら戦後秩序を破壊する挙に出た。そこには正当化できる何の理屈も見出し難い。ウクライナ国民は一方的にプーチン大統領の暴挙の犠牲になっている。そう考えるからこそ、これは国際秩序を守る戦いだとして、西側が一致団結しウクライナを支援している。ロシアの非道を許してはならない。

ロシア軍の侵攻で大きな被害を受けた建物。1階のイタリアンレストランを、作業員たちが片付けていた=2022年8月4日、ウクライナ・イルピン

 ただ、それはそうとして、日々伝えられる悲惨な犠牲をこのまま続けていいものか、我々はその思いもまた否定し去ることができない。

 一体この戦争はいつまで続くのか。出口はあるのか。誰しもがそう思う。3つのレベルで考えてみたい。

ウクライナ戦争の出口をシミュレートする

 第1は、「タマはもつのか」。武器弾薬が切れれば戦闘続行は不可能だ。

 ウクライナ側には間断なく西側から武器弾薬が流入する。さすがに米国ですら、特定の武器は在庫が減りつつあるとの報道もあるが、まだまだ供給は安泰だ。問題はロシアだ。既にロシアの戦略は、狙ったところへのピンポイント攻撃から、攻撃対象一帯を大量の弾薬で破壊し尽くす作戦に変わった。弾薬の消費量は並大抵でない。しかも西側の制裁が効いている。半導体等、先端技術へのアクセスは止められ、使用する武器は一世代前のものが中心との報道もある。

 もし、ロシア側が「タマ切れ」になり戦闘能力を欠くに至れば、ウクライナとしてこんないい展開はない。しかし実際は甘くない。ロシアの在庫はまだ潤沢で、少なくとも当面のところ、ロシアが武器弾薬に不足することはないものと見られる。

 第2は、「人はもつのか」。犠牲者が多数になれば、戦闘をやめようとの機運も生まれよう。

 ロシア側の犠牲者は既にアフガニスタン戦争時に匹敵するという。それだけの犠牲者が出れば、国内で反戦機運が高まっても不思議ではないが、実際は、その動きはほとんどない。プーチン大統領が睨みを利かせ、国内の不満を抑え込んでいる。この状態が崩れる兆候は当面見受けられない(プーチン大統領の側近の娘ダリヤ・ドゥーギナ氏の乗った車が爆発、ドゥーギナ氏が死亡した事件で、反プーチン勢力・国民共和国軍(NRA)が犯行声明を出したが、いまのところ真偽は定かではない)。

 むしろウクライナ側の犠牲が著しい。戦場はウクライナ領内であり、戦闘員のみならず民間人の犠牲も無視できない。しかし、ウクライナが、犠牲が大きくこのまま戦争を続けるのは困難、と考えることはない。

 ウクライナにとり、この戦争はいわれなき戦いだ。一方的にロシアが自国領内に侵入し、一部を併合しようとしている。ウクライナにとり、これは自らの領土を守る戦いであり、ウクライナの存立をかけた戦いだ。多少の犠牲はあっても負けるわけにはいかない、との点で国民は一致している。つまり、「正義」の実現か「犠牲」の回避かを迫られても、国民に正義を捨てる選択はない。従って、第二のレベルでも戦闘が止む気配はない。

ウクライナ南部クリミア半島セバストポリのロシア黒海艦隊司令部付近で起きた爆発とされる写真。クリミア先住民族組織のチュバロフ議長が8月20日、フェイスブックに投稿した

 第3は、「戦意は持ちこたえられるのか」。厭戦気分が蔓延してはいないか。
無論、ロシアはプーチン大統領が国内を抑え込んでいるし、ウクライナは正義の前に犠牲を厭わないとする。いずれも厭戦気分とは無縁だ。ここではもっぱらウクライナ支援の西側が問題だ。

 既に欧州は分断されている。一方の極はバルト3国やポーランドだが、その士気はいずれも高い。ウクライナの次にロシアが侵攻するとすればこれらの国々だ。これらの国にとり、今ウクライナで起きていることは他人事でありえず、自らの安全がかかる現実の脅威だ。だから、ロシアに二度と他国を侵略しようとの気を起こさせないよう、徹底的にたたいておく必要がある。つまり徹底抗戦の構えだ。

独仏伊の腰が引けている理由

 これに対し、

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