止まらない内閣支持率の低下。良質の自民党支持者が離れるリスクも
2022年09月01日
新型コロナウイルス感染による療養から復帰した岸田文雄首相が8月31日午前、首相官邸で記者会見した。そこで何を語るのか、久しぶりの“肉声”に少なからず期待したが、中身は療養から復帰した“挨拶”の域を出ず、新味に乏しいものになった。
注目されたのは、自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との癒着問題に断固とした対応を示すかどうかであった。しかし、首相からは結局、踏み込んだ発言はなかった。
岸田首相は会見で、旧統一教会の問題に対して懸念や疑念の声が上がっていることについて、党総裁として「率直におわび申し上げる」としたうえで、自民党所属の各議員に旧統一教会との関係性を点検して結果を公表すること、当該団体との関係を断つことを党の基本方針として徹底すること、社会的に問題が指摘される団体と関係を持つことがないよう党のコンプライアンスチェック体制を強化すること、の3点を先週、茂木敏充幹事長に指示したことを明らかにした。
首相自らが旧統一教会との“絶縁宣言”をしたことは評価するものの、それで決着するほど甘いものではないだろう。それに、安倍元首相と教団との関係を検証する考えがあるかどうかをきかれると、「ご本人が亡くなられた今、十分に把握するには限界があるのではないか」と述べるにとどまってもいる。
その安倍元首相を巡り、9月末に「国葬」をおこなうことに批判が高まっているが、岸田首相は会見でそうした批判について、「真摯(しんし)に受け止め、正面からお答えする責任がある」とし、「政権の初心に帰り、丁寧な説明に全力を尽くしてまいります」と述べた。また、国会の閉会中審査で「国葬」について説明し、質問を受けると言明した。
しかし、元首相の「国葬」に対して世論の批判が強いのは、単に経費や規模の問題ではない。旧統一協会問題の深刻化こそが、国葬反対の世論の原動力なのだ。
報道各社の世論調査は、このところ日ごとに岸田政権を袋小路に追い込んでいる。
朝日新聞が8月27、28日に実施した世論調査によると、岸田内閣の支持率は47%と、前月調査の57%から10ポイントも下落。不支持率は前月の25%から39%に跳ね上がった。また、毎日新聞の調査(8月20、21日実施)では、支持率が36%と3割台まで落ち込み、不支持率は54%と5割を超えている。
内閣支持率が急落した要因には、首相が原発の新増設を検討する方針を表明したことなどもあるだろうが、主因はやはり、首相や内閣、自民党の「旧統一教会問題」への甘い取り組みに、国民が強い不信感を抱いているからだろう。
それは朝日の世論調査で、政治家が旧統一教会との関係を「断ち切るべきだ」という回答が、82%に達しているころからもうかがえる。気掛かりなのは、自民党の政治家が、旧統一教会との関係を「断ち切れない」という回答が76%に達していることだ。「断ち切れる」はわずか16%。自民党支持層でも「断ち切れる」は28%しかない。世論は首相の“絶縁宣言”の限界を知っているのだ。
このまま岸田政権が“外科手術”を避けて、穏便にことを済ませようとすれば、内閣支持率は今後、30%台はおろか「危険水域」とされる20%台にまで落ち込むのではないだろうか。いかがわしさを忌避する良質な自民党支持者が、大挙して自民党から離れてしまう恐れもある。
31日の記者会見で、岸田首相は昨年の総裁選で掲げた自らの公約、「わが国の民主主義を守る」「信無くば立たず」を復唱し、政治の現状について「信頼が揺らいでいる」として、「深刻に受け止めている」と嘆いた。
ならば、ここで岸田首相には、日本の民主主義を守るために、不退転の決意で大上段から自民党の腐敗した部分を“切除”することを強く期待する。
かねてから私は本件について、首相が以下の3点に着手するように願っている。
(1)自民党内に「旧統一教会問題調査会」を設置し、党内外の識者(学者、弁護士、言論人など)の参加も得て、教団との関係を徹底的に調査して公表すること。
(2)その調査を踏まえて、岸田自民党総裁が、旧統一教会と自民党との関係について陳謝し、あらためて国民に決別を宣言すること。
(3)教団と深い関係のある政務三役や党役員は自発的に辞任することが望ましいが、必要に応じて総裁が辞任を勧告し、離党勧告をすること。
厳しすぎるという声も出そうだが、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください