2022年09月07日
新型コロナウイルスのパンデミック下で止まっていた日韓の人的交流が少しずつ再開している。先日9月3日はソウルで、バッハ無伴奏チェロ1〜6番をチェリストと舞踊家がそれぞれ6名でコラボするという公演があり、日本から山田せつ子さんと鯨井謙太郒(けんたろう)さんの舞踊家二人が参加した。
山田さんは韓国がまだ日本文化を大幅に制限していた1980年代後半、日本人舞踊家として初めて公式に韓国の舞台に立ったパイオニアであり、まさに「コロナ後」の交流再開にふさわしい存在だ。韓国の若きチェリストと日本のベテラン舞踊家の共演は息を呑むほど素晴らしく、カーテンコールでは手を取り合った二人の爽やかな笑顔が印象的だった。
隣国の人同士が自由に交流するのは素晴らしい。あらためて思いながら客席を見渡せば、そちらも韓国人と日本人が混ざっている。韓国には古くからの山田さんのファンがいるし、日本から訪韓した関係者もいる。
「3年ぶりです。本当に会えて嬉しい」
あちこちから再会を喜び合う声が聞こえてくる。
前回、統一教(トンイルキョ、韓国では旧統一教会/世界平和統一家庭連合をこう呼ぶのが一般的)について書いたら少なからぬ反響があり、編集部にぜひ続きをと言われた。
韓国人はなぜ統一教会に関心がないのか──在韓日本人信者は「圏外」にいた
それについてもいずれ書くが、韓国があまりにも特定のイメージに偏るのも良くないと思うので、今回はまず、現在普通にみられる韓国の様子をお伝えしたい。
韓国は日本よりも早く「コロナ後」に舵を切り、8月から暫定的に日本人のノービザ観光を認めている。すでにたくさんの日本人が訪韓し、さらに10月にはBTSの10万人コンサートも予定されている。そこには様々な問題もあるのだが、それも含めて、さて、今の韓国はどうなっているのだろうか。
これまで日韓両国は双方が新型コロナを理由に、厳しい入国制限(日本でいう水際対策)を行ってきた。特に日本は、あらゆる外国人の家族や留学生まで入国を不可とした時期があり、その厳しすぎる政策は国内外で批判もされた。韓国でもまた、当初は世界有数の厳しい入国検疫があり、人権とプライバシーに関しては、やはり国内外で問題となった。
「まさか新型コロナがあそこまで長引くとは思わなかった」
多くの韓国人が振り返るように、多少の厳しい措置も少し我慢すれば終わると思っていた。ところが何度も何度も感染の波が来て、みんな疲れてしまった。閉店する飲食店が続出し、もうもたない。さらに未知の病を恐れた初期に比べれば、人々の恐怖心も小さくなっていた。
「もう周囲でコロナに罹ったと聞いても誰も驚かないし、2回目という人だって結構いる」
驚かないというのは日本も同じだろう。8月に入ってからは1日の陽性者数が、日韓で並んで世界1位・2位を占めた日もあった。とっくに全感染者のカウントなどやめてしまった国が多い中、それでも日韓は一応保健所が数を把握している。もちろん漏れている人も相当多いだろう。
とはいえ「コロナはただの風邪」とまで言う人に韓国で会ったことはなく、よく耳にするのは「もうインフルエンザと同じだから」という言い方だ。これは韓国政府が4月下旬より感染症としてのランクを第1級から第2級に下げたためだ。指定病院もなくなり、「インフルエンザ等と同じく」(韓国メディア)普通の病院に行く。治療や入院も一部有料となったのだが、大きな不満の声は聞こえてこない。
「だって、政府の財源だって限界があるでしょうし」
その引き換えに国民に課された行動制限などもなくなった。残りは屋内でのマスク着用義務ぐらい。日本のようなアクリル板やビニールの囲いのような「感染対策」はほとんどない。
「政府も国民も十分頑張ったと思うんですよ」
まだまだ混迷する日本に比べると、韓国の人のほうがそこはさっぱりしているように感じる。切り替えが早いというのだろうか。瞬発力やスピードは、彼らの強みでもある。とはいえ、後遺症に悩む人は少なくなく、また一部にワクチン被害を訴える人もいる。さらに飲食店経営者が抱えている莫大な負債などの経済的問題も深刻であり、課題は山積みである。
そんな「コロナ後」の韓国には、2年半の空白を取り戻さんとばかり、たくさんの外国人が訪れている。日本人にノービザ観光が認められたのは今年8月だが、すでにずっと以前から欧米を始めとした国々の人々はノービザでの入国が認められていた。というより、韓国は当初から日本のように外国人の入国制限はしてこなかったのだが、検疫上の強制隔離などの措置を外国人が嫌がっただけ。それがなくなったことで、この夏からは外国人のバックパッカーなどが一気に増えている。
久しぶりに夜のソウルを回ってみたら、
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